for May 22nd

May 24, 2010 18:53


a story for Sean's Birthday. story about 10 months ago.

"So they are almost married couple."
 アランが言う、笑いが起こる、促すみたいに見てくるアラン。
 たぶん同時に、やられた、と思った。

ある種の劣等感があることはひた隠しにしてきたつもりだった。
 なにしろボブに会って、一体なんなんだと思った回数は手足の指じゃまず足らない。
 左指の紡ぐボタンアコーディオン、滑らかに自由なホィッスル、始めたばかりのフィドルの速さ。
 いつだったか、誰かが持ち込んだバグパイプを吹いていたのも見たことがあった。
 一体なんなんだ。
 そして8人で集まる度に飲む度に、遠巻きから、すぐ隣で、思った、確信した、彼は音楽だ。
 クリアな文章を書く、誠実でまともな、彼は音楽なのだ。
 そう思ったから、ドラムができない、とその音楽が言ったときにはにわかに信じられなかった。
 聞けば、(よくわからないけれど、)スティックがうまく動かせないらしい。
 だから、誰かが一番底を支えてくれてこそ自分は好き勝手弾けるのだと、
 この速さで行こうと促してくれるから弾けるのだと、臆面なく言い切る彼に陥落した。
 一体なんなんだ。
 手放したらだめだと信じたのは、裏切られたと思うより先。
 彼がついていけなくなるようなリズムキーパーでなきゃ飽きられる。
 そんな気がして、加速させた、ハプニングを愛するドラマーとしての性質。
 呆れながらメロディメイカーは、追いかける足を速めてくれた。

少し広めのライブハウスはマイクとマイクの間が広くて、からかう距離がばかに長くて。
 全員がマルチ奏者のこのバンドで、ひとりだけがドラムをしない。
 ひょいとその人を振り返る。まるで普段とおんなじに。
 先に動いたのはボブだった。
 息を詰めるのはまたたきの長さ、決めるのはその半分。
 少し戸惑う気配、それから足音は歓声と拍手のなか。
 照れくささを先に背負ってくれたボブに、観念してショーンは今更手を伸ばす。
 20年間の感謝と愛、その断片さえも込めることはできないけれど。
 出会ってからずっと、隣に立ち続けてくれた人に。

bob, great big sea, fanfic, sean

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