遠い記憶を切り裂くように、その音は近付いてくる。
たかたかたかたかたかたかたかたかたかたかたからったったったったっ、たらったっー
聞き慣れたスーパーカブのエンジン音だと、すぐにわかった。だけど圭亮くんに、ここがわかるわけはない。イヤホンを外し、杏奈は屋上の端の鉄柵まで、走り寄った。
もしかして光なのだろうか?でもそんなわけないじゃないかー。
がちゃん、とスタンドを立てる音に被さるように、杏奈を呼ぶ声が聞こえた。光の声ー。
見下ろしながら、もう涙が溢れていた。光が来てくれた。
杏奈は泣きながら、光の名を叫んでいた。
Tooi kioku wo kirisaku you ni, sono oto wa chika zuite kuru
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