And what is left of the rose is only its name.

Oct 09, 2011 20:52

ながいながいながいながい、ながい!夏が終わって、ようやくちんたら『主任警部モース』を観始めたわけですが。

夏の次は即、冬か! (翻訳:ホットカーペットに手をつけた orz)

微妙に体調が戻らず、はかどりません^^;

でもほっといたら忘れるのでメモ。

第4話『消えた装身具』(S02E01 - The Wolvercote Tongue)。

アメリカ人向けのお高いオックスフォード観光ツアー客の1人が、格式あるランドルフ・ホテルで死亡。
自然死のように見えたが、現場からは、ホテル向かいの由緒あるアシュモリアン美術館に、彼女が寄付することになっていた、
歴史的に大変価値あるバックルの留金(これが The Wolvercote Tongue)が、無くなっていた――
というところから始まるお話。

ここでまず1つ。
ベルトのバックル部分の留金を、英語では、tongue と言うんですね。
シンプルなバックルを思い浮かべれば、合点がいくような。
  ttp://www.leathercraft.jp/goods/metal/peges/56/04.html

いわゆるピン。フレームに引っ掛ける部分。
舌のような形で、細長く、穴等に差し込めるようなもの。
(ウルヴァーコートは、アシュモリアン美術館の至宝たる、問題のバックルが発見された場所の名前)

ドラマに出てくるのは、起源を千年以上溯るという、装飾的で大変美しい、組み合わせるタイプのバックル。
現在美術館所蔵の、バックルの『片割れ』が発見されたとき、騒ぎに乗じて押し寄せたトレジャー・ハンターの手によって、
対の留金のほうは売り飛ばされて、海外流出の憂き目にあいました。

最初の死者は、所有者の未亡人。
亡夫ほどコレクションに興味がなかったのか、美術館側の奮闘努力の説得に折れ、旅行がてら留金を寄付しにイギリスへ。



左が美術館に所蔵されているほう。右がラストシーンで再発見される『Tongue』です。
所蔵品の背景に写っている輪は、『Tongue』の拡大写真。右画像で人差し指が掛けられている部分です。
写真と所蔵品は、角度を変えると、2つのパーツがちゃんと嵌っているように見えます。



こんな感じ。

・・・・・・えーと、差し込む方が tongue ならば、美術館にあるほうが、tongue のように思えるのですが。
上端の丸い部分を、裏から写真の輪っかの部分に差し込んで、留めるんですよね?

どなたか解説求む orz

ちなみに、このウルヴァーコートのバックルは実在しません。え、いや一応(何よ)
  ttp://en.wikipedia.org/wiki/Wolvercote#Cultural_depictions

――ウルヴァーコートの舌。
誘いだされる。いったいどんな話なんだろうと。
良いタイトル。

さて。
我らがモース警部は、死と盗難には関連があると睨んで捜査を始めますが、続く全裸死体は英国が誇る名優にして才人、サイモン・キャロウ。
ルイス警部12話『甦った伝説のロッカー』でも、魅惑の肉体を披露してくださいました^^;
今回は性向が真逆ですが、どちらにしろ精力的。
『フォー・ウェディング』では、ハナちゃん(ジョン・ハナ)の、かなり歳上のはっちゃけた恋人でした。
The Pink List 2007年版では29位。
  ttp://www.independent.co.uk/news/uk/this-britain/the-pink-list-2007-the-iiosi-annual-celebration-of-the-great-and-the-gay-447627.html

第2の死者は、留金を取り戻すことに精魂を傾ける、アシュモリアン美術館のセオドア・ケンプ教授。
精力的なお仕事の傍ら、色事にもパワー全開。
自分の起こした事故で下半身不随になった妻の面倒を見ながら、フットワークはあくまで軽快。
愛人だったツアーガイドのシーラを軽やかに捨て去り、新しい愛人のもとへ。
最低ちゃんのようですが、でも確かに人を惹きつける魅力がある。
少なくとも、シーラと妻が、単純な気持ちではなかったにせよ、彼を愛していたことは確かです。

モースとルイスは例によってパブで一杯やりながら、全裸談義。
――人はいかなるとき裸になるのか。
徹夜明けで天然にボケまくるルイスに切れるモース(笑)
女房持ちのくせに!と責められて、ようやく思い至って切り替えすルイスに、びみょーに鬱屈したようなモースの返事も楽しい(笑)
そっちの経験値では勝てっこないもんね(笑)
独身ゆえに経験値の高いタイプもいますが、モースはよーするに、ヘタレ いえ、ロマンチストだから(笑)
字幕もよくニュアンスが伝わっています(笑)

浮気現場で殺されたのではないかという推察を元に、被害者の新しい愛人を特定すべく、ふたりは未亡人に会いにいくことに。

ここで2つ目、というか、こっちが本題です。
・・・・・・長いのでお暇なときにどうぞ orz

"The only person to ask that is the widow. She knew all about this hanky-panky, didn't she?"
「未亡人に聞くしかないな。亭主の浮気は知ってたんだろ?」

モースお気に入りのツアーガイド・シーラに対する疑惑を捨てきれないルイスを退けた上での、モースの結論です。

ハンキー・パンキー。
・・・・・・ルイス(警部)が似たようなことを言ってたような。
ランピー・パンピーだ。
rumpy-pumpy?
どの話だったっけ?

手っ取り早く inspector lewis rumpy-pumpy で検索してみました。
結果、モースの quote ページが山盛りヒット。

主任警部モース第33話(最終話)『悔恨の日』(S12E01 - The Remorseful Day)は、
中年の看護婦が自宅寝室(豪邸。夫は医者)で手錠を掛けられた全裸死体で発見されて・・・、というお話。

またか!とか言わないよーに(笑)
毎度全裸死体が出てくるようなシリーズではありません。本当だってば。

"Oh, not Yvonne Harrison, surely, sir?
A respectable married nurse, having, well, kinky rumpy-pumpy with a man she hardly knows? At her age?"
「イヴォンヌ・ハリソンは違いますよ。看護婦で夫ある身です。いい年して親しくもない相手と変態プレイなんて」

"It's not unknown, Lewis."
「しないとも限らんぞ、ルイス」

・・・・・・ルイス。
君、よく知る相手なら kink もありなんだね?(笑)
全裸談義の切り返しも、「あれなら別に全部脱がなくても」だったしな。

後半では、モースがこの『kinky rumpy-pumpy』を、ウチの カミさんがね 部長刑事に言わせれば、と引用して、
被害者の kinky rumpy-pumpy のお相手に、"Snappier" と吐き捨てられます。
snappy は、粋な、上品な、と言う意味なので、もっと上品なものだ(そんな下品なものではない)、というところでしょうか。
どんな言葉を使おうと事実に変わりはないんですが。
字幕では「下品な」。

ルイス警部で出て来たのは pilot 『数学殺人事件』。

数学科の女学生が殺されて、同じ数学科のボーイフレンドに疑いが。
彼は事故死した有名レーサーの息子で、実家は英国有数の自動車メーカーでした。
殺人事件専門のモースが生前、まだ15歳だった彼の器物損壊罪を捜査していたことから、名門一族の秘密に迫ることになる、
帰国したばかりで余計者扱いにイラつくルイスと、余計なのが来たと思っているハサウェイ。
運命の出会い(笑)

第一容疑者たるダニー・グリフィンは、父の事故死は叔父レックスの仕業であり、叔父と母トルーディには肉体関係がある、と思っています。
レックスが、被害者リーガンと一夜の関係を持っていたことから、

"What about Mrs. Griffon, then? Say she discovered Rex was two-timing her with Regan."
「夫人がレックスの浮気を知ってたとしたら?」

"You reckon Danny's right then. Rex and Trudi having... rumpy pumpy."
「ダニーが思うように、2人は・・・、デキてると?」

一度は関係を否定した母と叔父は、ダニーの死後、それを認めます。
納得がいかないルイスに、ケンブリッジ卒の司祭崩れ君いわく、「何かデンマークに善くない事があるのでござらう」。
(坪内逍遥訳。・・・面白いなwikipedia。 ttp://ja.wikipedia.org/wiki/シェイクスピアの文句を題名にした作品一覧)
これはハムレットのセリフなんですが、もう慣用句になっていて、どこかおかしい、なにか怪しいことがある、という意味なのだそうで。
字幕では「何か怪しいですね」。
ハムレットみたいだ、と言って、ハサウェイは続けます。

"Well, Hamlet's uncle killed his brother, Hamlet's father, and then had, uh... rumpy-pumpy with the widow."
「ハムレットは叔父に父を殺され、その後、叔父は母と・・・、デキてしまう」

『ルイス警部』を『主任警部モース』の続き、と考えれば、ルイス警部 pilot は、『悔恨の日』の、すぐ次の話です。
6年の時を経て、同じ言葉をルイスが言い、同様に、後半その言葉を相棒が繰り返す。
これも製作側の目配せの1つ・・・、ですよねv

日本語字幕の『デキて』の前の『・・・』は私が加えたものですが、英語字幕のランピー・パンピーの前のやつは、原文ママです。
ルイスにとってもハサウェイにとっても、ちょっと言い難い言葉らしい。ルイスは『悔恨の日』でも、手前に well と一拍置いていますし、何より表情に顕著です(笑)
それに対して、じーさまはひるみませんでした。
具合が悪くてそれどころではなかった、ということもあったのでしょうが、元気だったとしても平然とかましたことでしょう。
さすがやね。

ところで、hanky-panky と rumpy-pumpy のそもそもの意味ってどんなものでしょう。

hanky-panky はどこのオンライン辞書でも出ます。
英辞郎 : 1.〈話〉不正、いんちき、ちょろまかし 2.〈話〉性的な[不道徳な]行為、性愛の戯れ 3.〈英話〉手品
Yahoo!辞書 : 1.不正,ごまかし,よからぬこと;不倫,浮気 2.((米))愚行,たわごと. 3.((英))手品,奇術;曲芸
Weblio辞書 : 1.いんちき,ごまかし; 不正取引. 2.(性的に)いかがわしい行為.

rumpy-pumpy は、Wiktionary英語版が入っている、Weblioのみ。
(uncountable) Sexual intercourse.

性行為、ということですが、それのなにがそんなに言い難いのか。
ていうか、それなら何故、make love とか、それこそ、sex ではいけないのか。
・・・まあ、sexual intercourse とは言いませんよね。アナウンサーじゃあるまいし。
どうせ英和辞書にないのなら、海外に行ってみましょう。

Urban Dictionary: Rumpy Pumpy :
The act of Sexual Intercourse between a Man and a Woman, usually in a lighthearted and quick manner.
男女間の性行為。大抵は気軽で手っ取り早く行われるもの。

心の伴わない、単なるセックス、という理解でいいのかな?
もっと掘ってみよう。

The Phrase Finder  ttp://www.phrases.org.uk/index.html
ここは、語源の説明からあって、いろいろ便利なところ。

hanky-panky
  ttp://www.phrases.org.uk/meanings/168950.html

意味は日本語サイトとほぼ同じです。が、語源が面白い。
韻を踏んだ言葉遊びから発生したフレーズで、構成している元々の単語と、語義的には関連がない。
歴史は古くて、1841年に出版された本に載っています。
手品のトリックから、騙すとか裏切るという意味ができて、性的な関係に置いては、不道徳とか浮気、になると。
その意味で使われ出したのは20世紀になってから。
1939年出版のジョージ・バーナード・ショーの『ジュネーヴ』から例が引かれています。

・・・・・・おや。見た文字が。

She: No hanky panky. I am respectable; and I mean to keep respectable.

続いて rumpy-pumpy
  ttp://www.phrases.org.uk/meanings/rumpy-pumpy.html

性行為。特に略式でぶしつけな性質のもの。
シェークスピアのいかがわしい場面に出てきてもおかしくないような響きだけど、でも60年代以降の新造語、とのこと。

どういかがわしいかと言うと、"rump"と"pump"の組み合わせがイケナいらしい。
rump=尻 pump=ポンプ

ポンプと言われて jade さんが思い浮かべたのは、サリバン先生が井戸のくみ上げポンプを必死に漕ぎながら、ヘレン・ケラーに「うぉ、うぉーらー!」と言わせたあのシーンで、その瞬間「うわお!」と声を上げそうになったりして^^;

つまり、"rumpy-pumpy" という音だけで、英国人的には、お×りが忙しなく上下しているイメージが浮かぶと。
なるほどちょっと口には出しにくいし、確かに下品(笑)
でも、『悔恨の日』の紳士面したおっさんのやってたことは、文字通り『kinky rumpy-pumpy』だと思います。
ルイスは正しい。
字幕の『変態プレイ』も、正確な訳だと思います。ちょっと破壊力は足りませんが(笑)

そもそもの語源からして良い意味ではない、hanky-panky は、30年代の女性が普通に使って問題ない言葉です。
それに対して、rumpy-pumpy は、いわゆる悪い言葉ですが、語義的には『性行為』以上でも以下でもありません。(だからルイスも、『悔恨の日』では "kinky" で補なっているんですね)

では、どうしてわざわざちょっと言い難い rumpy-pumpy なんて言い方をしているのでしょう。
『悔恨の日』のルイスのセリフを見直してみます。

"A respectable married nurse, having, well, kinky rumpy-pumpy with a man she hardly knows?"

hanky-panky の例文中にも出てきた、respectable とは、Oxford Advanced Learners Dictionary によれば、
  1.considered by society to be acceptable, good or correct
  2.fairly good; that there is not reason to be ashamed of

まっとうさ、善良さ、地位、尊厳といったような美点を、周囲から認められていて、恥じるべきところがない。
そして、hanky-panky の例文にもあるように、それは、keep しなければ、失われるものです。
そういう守るべき美徳を持っている状態、を指す言葉。

rumpy-pumpy 自体には、性行為という以外の意味はありません。
ですが、上のセリフから考える限り、ルイスにとっては、respectable married person のやることではないらしい。
・・・・・・kinky は、さして問題じゃないよなルイス? 着衣えちもありなんだから(違)

じゃあ、ルイスの考える respectable married person とは?

これについては、ルイス警部11話『許されざる嘘』(S3E03 - The Point Of Vanishing)に出てくる日焼けサロンのオーナーが、分かりやすい悪例だと思っています(笑)

第一被害者が、ゲイの振りをしてその日焼けサロンに勤めていたのですが、なんでそんないらんことしてたかと言うと、オーナーの妻と不倫関係にあったからです。
オーナーに好意を持てないことを認めながらも、ルイスは、彼は殺していないと言います。

"But Marc is dense enough not to realise that his wife was..."
「だが彼は妻の浮気にも気づかない・・・」

"What, having it away with the help?"
「鈍感な男?」

ここでも、実はルイスは言葉を濁していて、わかるだろ?って感じでハサウェイを見るんですが、
当のハサウェイは、「なに?従業員とセックスしてたこと?」とバッサリ(笑)
ここはさすがに、字幕でニュアンスまで表現するのは無理でした。
ルイスとしては、上品ぶって言葉を避けているのではなく、口にしたくないことなのではないかと。
上品さでその手の話題を避ける人は、それこそ rumpy-pumpy なんて言葉は使わないでしょうし。
ルイスにとって問題なのは、セックスそのものではなく、それが浮気であることだと思われます。

愛する人をちゃんと見つめていれば、余所見されたら当然気づく。
オーナーが妻の浮気に気づかなかったのは、彼の妻に対する愛情がいい加減なものだから。
ルイス的にはそういうことで、寝取られ男にまったく同情心がありません。

つまり、respectable married person たることを、自ら持していたであろうルイスとしては、
sex とか make love と言うのなら、それは愛しあうふたりが、愛情ゆえに交わすものでなくてはならず、
それを、浮気や遊び、身体だけの関係といっしょにされては堪らないので、rumpy-pumpy なんだろうと(笑)

となると、本来は意味が違う、hanky-panky と rumpy-pumpy ですが、
ルイスの使い方では、ほぼ同じこと――性的な不道徳、あるいは浮気――を指していると言えそうです。

同じ内容を、似たような反復語を使って表現しているのに、
片方はいかにもインテリ・モースが使いそうな言葉で、もう一方は、いかにもルイスが使いそうな新造語。
(年代もばっちり。今時の子が成り立ちを知らないで使うのとは違う、という意味でも、いっそう言い難いのだろうと思います/笑)
よく考えられていてほんと面白いなあ、というのが、この、だらだら続いた駄文の超絶シンプルな結論でした orz

これ、9月20日から書き出したんです・・・。
・・・・・・トロい。トロすぎる(涙)

松茸堂さんのdS本、まだ通販お願いできるかしら orz

morse, lewis

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