メビウスの輪の果てには?
「フィリアさんはあの通り、あぶなっかしい方ですから。守ってあげて下さいね。解っているとは思いますが、あれは事故です。彼女にとって事故ですから。解りましたね?」
「…何が、どこから、どこまでが事故なんだ?」
「初めから、どこまでも…最後まで事故でしたよ。」
あの日から、母さんは、一歩も動けていない…と思う。
オレにはよく分からないけれど、それでも、二人がああいう関係で、何故か別れちまったみたいな経緯くらいは理解できる。そして、母さんは死ぬほど後悔している…と思う。
-フィリアさんはあの通り、あぶなっかしい方ですから。守ってあげて下さいね。
そんなことオレに言うくらいなら、最初から泣かすなよ…
ちょっと、我慢してやれば…女って意外と素直なのに。(多分だけど…)
さんざん、ヴァルガーヴにつっかかっていた幼なじみのコレット、捻挫して家まで連れて帰ってやってもぶすっと俯いてろくに御礼も言わなかった子だけれど…次の朝、まだ痛い足を引きずって、通学路で待っていた。
「…昨日は、ありがとう。」
そう小さく言うと、大きな栗色の目からぽろぽろと涙を零した。
「…ずっと、素直になれなくてごめんなさい。」
小さい頃から、ずっと一緒に遊んでいたヴァルガーヴが、年をおう毎に、どんどん離れて行き、知らない人みたいに背も高くなって、力も強くなって、自分とちがう存在になっていくのに戸惑っていた、怖かったとコレットは言った。
そういえば-コレットの身長を抜いたのはいつ頃だろうか?
腕だって、肩だって細くて、白くて、男みたいに扱っちゃまずいな…って、いつのまにか思っていた…
なんだか、守ってやらないとまずいな…
その態度が、コレットは怖かった…?
受け入れにくかった?
でも、結局、今は、巧くやっている。
オレは12歳…
そういや、母さんとゼロスは何歳だろう??
まあ、もの心ついた頃からいるから、ずぅっと恋人同士だったということだろうなぁ…
長いつきあいなんだし、子供じゃないんだから…どっちかが折れろよ…
ヴァルはぶつぶつ考えつつ、リビングのドアを開ける。
「ずっと…ずっと前から好きだったんだ~~!」
いきなりジラスはクラボスを押し倒した。
「ちょっ、ちょっと待って」
クラボスは焦りながら部屋の中を見た。
「何をやってるんだ?」
「ヴァルガーヴ様、これは…」
グラボス赤面。
「まさか…」
「違う、違う。これ、街で…」
ジラスは顔をぶるぶる振る。
「街で流行っている劇の真似です。」
「信じて~」
獣人たちは、泣きそうな目で訴える。
「誰が、マジにとるかよ。」
二人は心底ほっとした表情で胸をなで下ろした。
ヴァルはやれやれと言って、ソファーに腰を下ろす。
「ちょっと、話しあるんだけど。」
「何ですか?」
「母さんって、何歳?」
「姐さん…?」
ジラスはグラボスを見る。
「…さあ?」
グラボスは、首を傾げる。
「でさあ、核心なんだけど、オレはゼロスの子か?」
ジラスが大きな目を落っこちそうに、大きくする。
「…違います。」
グラボスは、ものすごく困った顔で応える。
「お前らのどっちか、オレのおやじ?」
獣人は首をぷるぷる振る。
「なわけないよな、似てないもんな…強いて云えば、母さん似だからな。」
獣人達はふんふん頷く。
「オレが推理するに、オレは、母さんの子でもないだろう?」
「え”」
獣人の顔は見事に青ざめる。
「やっぱりな…。」
間髪入れずに、ヴァルガーヴは納得。
「気にするなよ。母さん、よそのうちのおばさん達と比べると、なんか違うんだよ。なんていうのか…危なっかしい(ゼロスの言っていたように)それに、まだ、『女』なんだよな。」
「……。」
獣人は硬直したまま、ヴァルガーヴの言葉を聞く。
「さしずめ、母さんの知り合いとか、姉妹とかの子で、事情があって育てられないか、捨てられたのを、お前らと母さんが、育ててくれているんだろ?」
「捨てられてない!!姐さん、空から落ちてきたの、拾った!!」
ジラスは夢中で叫んだ。
グラボスの鉄拳が振り下ろされる。
「………オレ、空から落ちてきたんだ?」
「まあ。」
グラボスは曖昧に返事する。
「まあ、いいや。その辺は…いつか、話してくれるんだろう……それより、オレが、その辺のこと解っていること、それとなく母さんに言っておいてくれない。そしたら、母さんは、心おきなくゼロスと×××…」
最後の方で、さすがにヴァルガーヴは赤くなって、部屋を出ていく。
「どうする?親分?」
「言うしかないだろう?」
「でも、姐さん、元気ない。」
「そうだけど…」
こうして、この夜は更けていった。
が、次の朝、大変なことが起こっていた。
「姐さん!!ヴァルガーヴ様、様子おかしい!!」
まだ日が昇らぬ薄闇に、ジラスがぬっと現れる。
フィリアは、悲鳴をあげつつ、起きあがる。
床にめり込みながらも、ジラスは叫んだ。
「早く、ヴァルガーヴ様、変!!」
フィリアが、急いで、ヴァルの部屋に行くと、グラボスがおろおろしていた。
ベットの上には、強い光に包まれ、苦しげに息を吐いているヴァルガーヴの姿。
意識は内容だが、すごい熱を放っていて、とても近づけない。
「……変異期です…オスの竜は、成人の竜になるまでに一回、経験する…」
「大丈夫なんですか?すごい苦しそうですぜ。」
グラボスはフィリアに。
「大丈夫…でも、沈めるためには…成人した雄竜の鱗が必要です。」
「雄竜の鱗ぉ???」
「でも、こんなに早く変異するなんて…普通、30年くらいを有するはずなのに…。」
「どうする?姐さん。」
ジラスが熱風にあおられて、フィリアにがしっと捕まる。
「…私、雄竜の鱗を探してきます。」
「でも、古代竜の鱗じゃなくても、いいんですか?」
傍らのグラボスも押されている。
「はい、どんな種族の雄竜の鱗にも、含まれる『ペクツゥム』という要素が必要なだけです。ヴァルの身体に、ベクツゥムの粉を振りかければ、肌が同化して、成人の竜の力を制御する強固な器を作れるんです。普通、竜の一族には、ペクツゥム剤が保管されていて、実際に鱗を使うことなど今はめったにありません。だから、近くの竜族の所へ行ってもらって来ます。」
ズキュィ------ン!
大きな音とともにレーザーブレスが放たれる。
フィリアは瞬時に結界をはったものの、獣人ごと風圧で部屋の外に転がる。
「…すごい力…」
フィリアはせき込みながら、ヴァルの方を見る。
次の瞬間、
フィリアは、一気に、結界を重ねる。
ベットを包む白い球体の中に赤黒いレーザーブレスが繰り返し、放たれる。
「…どうしよう…」
フィリアは、呪文を唱え、簡易的な封印を施す。
早くしないと、街をめちゃくちゃにしかねない、エネルギー放出量。
フィリアは、胸に手を当てると、さらに、呪文を唱え、強固に封印をめぐらす。
「…ジラスさん、グラボスさん、この封印は1日もちます。」
肩で息をしながら、フィリアは、床に転げている獣人に告げる。
「その間に、ペクツゥムを手に入れてきますから…もし、明日のこの時間に私が戻らなかったら…ヴァルを森の谷に投げて下さい。」
「えええ----!」
獣人はそろって声を上げる。
「…こんな急激な変異では、それ以上持ちません。っていうか、内部の力が強すぎて、身体が破裂します。そしたら、こんな小さな街なら吹き飛びます。」
「えええーーーー!!」
フィリアは、外に出ると、竜に変化し、空高く舞い上がる。
が、しばらくして急降下する。
……封印で体力使い切ってしまったみたいですね。
何とか着地した、岩山に腰を下ろす。
「でも、早くカタート山脈へ向かわないと…」
フィリアは、再び飛び立とうとするが心臓が痛み、目眩を感じる。
封印が軋み、術を施したフィリア自身をアストラルサイドから圧迫しだした。
嘘……私じゃ、抑えきれない…1日ももたない?
カタート山脈まで瞬間移動は無理…全速力で繋いで…ぎりぎり…。
とにかく、少し回復させてと、人間の姿に戻り、木陰に入った。が、フィリアは、小さく呻く。アストラルサイドの締め付けがさらに激化し、そのまま、意識を失ってしまった。
じきに、強い雨が降り出す。
フィリアは、ずぶぬれになりながら地面に伏せっていた。
どのくらい経っただろう、雨でぼやけたフィリアの視界に、空を旋回する2匹の竜が入る。
手には槍…地竜の兵士…?
天の助け?夢?
次に、耳元で声が聞こえる。
「竜のメスだぜっ!!おい、嘘だろう、こんな辺境の警備地区に…しかも若い…美人♪」
男達は、人間に姿を変えて、フィリアのもとに降り立っていた。
かなり、柄の悪い下級兵士の様だった。
「なあ、これ、黄金竜じゃないか…この耳…香り…」
褐色の髪の男が…
「えっ…まさか、絶滅したって噂聞いたぜ。」
朱色の髪の男がフィリアの頬のつんつん触れる。
「一匹くらい残っていたんじゃないか?しかし、黄金竜は気位高くて、本当にむかつく奴等だったから、始末されて、ざまあみろだ…」
褐色の髪の男は唾を地に吐く。しかし、男は急に思いついたように、隣の男に耳打ちする。朱色の髪の男が、まだ意識が朦朧とするフィリアを抱き上げ、ともなって近くの小屋に入る。
-暖炉の火の音
フィリアは、ようやく意識がはっきりして、身体を起こす。
暖炉の側のテーブルで、警備服を着た二人の男が、酒を飲んでいた。
「気が付いたぞ。」
男達は、フィリアに目をやると、近づいてくる。
しかし、フィリアには一目で、彼らが竜だと分かった。
「あなた方、竜ですね?」
「ああ、竜だ。だけど、あんたみたいな、たいそうな位の巫女じゃない。地竜の辺境警備兵だ。」
男達は、フィリアがカタート山脈の水竜の前で失礼がないように、纏った礼服を指した。
が、フィリアは、男の様子にかまわず続ける。
「私は黄金竜でフィリアと申します。…お願いです。鱗を分けて下さい。子供が変異期で、でもベクツゥム剤がなくて。」
「子供って…嘘だろう?あんたみたいな若い娘の子供が何で変異するんだ?」
朱色の髪の男が不思議そうに。
「本当です!一刻も早くっ!」
「でも、黄金竜の子供だろう?俺等は、黄金竜に昔から酷い目に遭わされているんだ。生まれた地区が黄金竜の支配地域だったからな。」
褐色の男は意地悪く言った。
「…お願いします。今の私の翼では、カタート山脈まで飛べません。どうか。」
フィリアは、必死に褐色の男の身体にすがる。
「…気安く触るなっ!」
男はフィリアを振りほどいた。
でも、フィリアは床に転んだまま、懇願する。
「いつも、さんざんこけにした地竜の、しかも下級兵士に頭を下げるなんて、どんな気分なんだろうな。」
男は笑った。
「まあ、いい、鱗を分けてやらない訳ではない。ただ、取り引きしよう。」
「何でもします!でも、お金とかは今はあまり持ち合わせが…」
「…金じゃない、っていうか、さっき、財布見せてもらったけど、ひどいものだな。」
朱色の髪の男が、フィリアの財布を振るってみせる。
「…条件は簡単。俺達二人の相手をしてくれれば良い。」
「相手…ですか?」
フィリアは、不思議そうにする。
「全く、お嬢さんには困るよな。」
朱色の男は嗤う。
「抱かせろってこと。」
褐色の髪の男が付け足す。
フィリアの顔が青ざめた。
「…どうした、やめるか?お嬢さん、巫女なら多少の腕は立つんだろう?俺達を蹴散らして逃げることも出来るんだろう?そう、俺達を殺して、鱗を取ったってかまわないんだぜ。」
褐色の髪の男はきつい目で呟く。
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その頃、フィリアの家には、久しぶりに獣神官が降り立っていた。
「お久しぶりです。随分、早い変異期だった様ですね。」
ゼロスは、静かに言った。
「それに、凄まじい力ですね…フィリアさんより既に能力値は高いでしょう。」
ジラス達は、とにかく右往左往して、いる。
「フィリアさんは…?」
「姐さん、鱗取りに行った。」
「ペクツゥム剤ですか?じゃあ、これは無駄でしたね?こちらで、激しいエネルギー放出があったので、もしかしたらと思って水竜の方々から頂いて来たんですが。」
「必要♪」
ジラスが、ゼロスの腕の飛びつく。
「待て、ジラス、信用できるのか?」
「ええ?でも、ヴァルガーヴ様苦しそう。」
ジラスは耳を平たくしてうなだれる。
「だったら、僕がやります。止められるなら止めて下さい。でも、誓って、これは普通のペクツゥム剤ですよ。」
ゼロスは、フィリアの封印をいとも簡単に崩し、自分の結界で抑えながら、粉を丁寧に身体に振りかけていく。すると、黒い光に包まれたヴァルガーヴの身体は、ゆっくりと、星くずのような粉と同化していく。それに合わせてエネルギーが身体に吸い込まれていく。
神々しい輝きを放つ、白い翼が、身体を覆い隠す。
「ヴァルガーヴ様、綺麗…」
ジラスは思わず、声を上げる。
「変異、完了ですね。」
ゼロスは言って、獣人を振り返る。
「ところで、フィリアさんは…?」
「カタート山脈行った。」
-------
「わかりました。あなた方のお相手をしますので、鱗をわけて下さい。」
フィリアは、震え声で言った。
「いい心構えだよ、闘いよりは上品な方法だろう?」
フィリアは、身を固し、男達の薄ら笑いを浮かべた表情を見る。
「じゃあ、俺からか?」
朱色の髪の男は、フィリアを抱き寄せると、戸惑うフィリアの唇に強引に口付ける。
「嫌っ」
フィリアは反射的に突き飛ばしてしまう。
「てめぇ!」
暖炉のぶつかった朱色の髪の男は、ものすごい力でフィリアの手を掴む。
「ご、ごめんなさい…わた…」
男は、フィリアの顔を殴った。
フィリアは、勢いで、ソファーにぶつかって床に崩れる。
朱色の髪の男は、フィリアに馬乗りになると、さっきより乱暴に唇を吸った。
「やだっ」
フィリアは、我慢しきれずに、顔を背ける。
強引は強引でも、ゼロスとは全然違う。
吐き気がするほど、嫌だった。
朱色の男は、服の上からたわわな膨らみを犯しながら、襟元を力任せに破る。
露わになった豊かな乳房を、男の指が乱暴に弄ぶ。
フィリアは絹を裂くような悲鳴を上げ暴れる。
が、男は懐に入り込み、フィリアの乳房に顔を埋めて、乳首を音をたてて吸う。
フィリアは、男を引き剥がそうと、必死に身体を振る。
抵抗に、男は、フィリアの腹の辺りにずれこみ、相棒に怒鳴る。
「おい、押さえてくれっ!」
「じゃあ、おれ、身体押さえてるから、先にしゃぶってもらえよ。」
褐色の髪の男はフィリアを羽交い締めにして、服からはみ出た乳房をきゅっと鷲掴みにする。
「大人しく、あいつのモノをくわえなっ。約束だろ?」
フィリアは大粒の涙を零しながら、首を振る。
「なあ、どうせ犯られちまうんだったら、楽しもうぜ。柔らかい乳しているな。」
と、フィリアを後ろから抱いたまま、小さなピンク色の突起をいじり、乳房を捏ねる。
「やっ!やめてっ!」
フィリアは反射的に暴れてはいるが、それでもどこかで自制していた。
これはヴァルのため…ここで、鱗さえもらえば、十分に間に合う。
フィリアは泣きながら、目を閉じる。
「そう、大人しくしな。」
後ろの男が、首筋を舐め、耳を噛む。
気が狂いそうな不快感。
続いて、フィリアの口に、朱色の髪の男の勃起したモノが押しあてられ強引に口に押し込められる。
-------
ヴァルガーヴの様子は落ち着き、ゼロスの計らいで人間の姿に戻り、すやすやと眠っている。
この封印、フィリアさんにはオーバーワークですね。おそらく、カタート山脈まで行き着けていないでしょう。途中で…
ゼロスは目を伏せた。
「ジラスさん、グラボスさん、迎えに行ってきますので、ヴァルガーヴさんをお願いします。」
ゼロスはアストラルサイドに姿を消した。
-------
男のモノをくわえさせられ、フィリアは大粒の涙を零し、首を振る。しかし、吐いても吐いても、男は激しくフィリアの顔にペニスをぶつけてくる。、首を背けても、後ろの男がフィリアの身体を蹂躙しながら、しっかりと押さえ込んでしまう。フィリアの激しい悲鳴と嗚咽が部屋中に響く。
が、急に辺りの景色がぶれたかと思うと-
二人の男の姿が消えた。フィリアを押さえつけていた男も、目の前で口にペニスを押し込めてきた男も跡形もなく…フィリアは放心状態でその場に崩れた。
数秒、部屋は嘘のような静寂に包まれた。
「何をなさっていたんですか?」
低い声とともに、フィリアの視界に、黒いマントがちらついた。
フィリアは、顔を上げられなかった。
声も出なかった。
「何をなさっていたかと聞いているんです…」
感情のこもらない淡々とした声が続く。
「どういうことかと聞いているんですよ…」
跪き、フィリアの顎を掴む。
しかし、その声はふいに怒号へと変わった。
「何とか言ったら、どうなんですっ」
フィリアは小刻みに震え、めちゃくちゃにされた衣服を引き寄せ、身体を隠す。
「今更、何ですっ!あいつらに見せられて、僕に見せられないのですか?」
ゼロスはフィリアの手を乱暴に開かせた。
「また、ヴァルガーヴのためだとおっしゃりたいのですか?彼のためならどんな犠牲も払うんですね?身体を差し出すくらい何でもないんですね。」
「違っ…」
「どう、違うんです?あのくらいの下級兵士なら、あなたにも殺れたはずです。殺って鱗をとればいいじゃないですか?」
ゼロスは、目を伏せ震え続けるフィリアに容赦なく、続ける。
「あなたは心優しい黄金竜の巫女ですから、目的のために、罪もない命を殺めるなんてことはできないんですね?そんなことするくらいなら、男のモノをくわえた方が余程平和的と思われるんですね。」
「やめてっ」
フィリアは悲鳴を上げた。
「聞きたくないですか?あなたがしていたことですよ。」
ゼロスは、蔑んだ目で続ける。
「…やめて…下さい…」
「そうですね。ヴァルガーヴの所に戻らなければなりませんからね。これは先ほどの竜の鱗です。」
ゼロスの右手から大量の青い砂が、フィリアの目の前に落とされる。
「まるまる2頭分ですので、ゆうに1000頭くらいの変異期に使えますよ。」
ゼロスは冷めた声で告げ、立ち上がる。
「さっさと、行ったらどうですか?瞬間移動する力はあるでしょう?」
しかし、フィリアは、その場を動けず、ゼロスを見つめていた。
と、急に涙声で怒鳴った。
「私ばかり、責めないで下さいっ!あなただって、一度でも、獣王様より私を優先してくれたことありました?あなたは私に愛しているなんて言ったことありました?魔族だから当たり前ですよね。私を仕事ついでにからかい、気が向いたとき抱くだけじゃないですか?あとは獣王様の言いなりですよね。私がヴァルを最優先させたからって、責めないで下さい。」
ゼロスは背を向けたまま。ぴくりとも動かない。
「…下らないこと言っていないで、さっさとヴァルガーヴさんの所に戻ったらどうです。」
「あんなことした私を見るのも嫌なんですね?だったら、これを持ってあなたが先に消えて下さい。あなただってヴァルに死なれては困るのでしょう?お仕事でしょう?」
「…こうしている間にも、ヴァルガーヴさんは苦しんでいますよ。」
「だったら、あなたが行けばいいんですっ!!」
フィリアは、怒鳴った。
ゼロスは、信じられないような冷たい表情で、振り返った。
「僕は、時間をあげましたよ。僕が怒っていることわかっていますよね?最後です。今、消えないと後悔しますよ。」
フィリアは、ゼロスから視線を逸らすことなく、その場を動こうとしない。
気が付いたとき、フィリアはゼロスに抱きしめられ、激しく唇を奪われていた。唇を舐め、歯の根から、顎の裏まで、さっきの男の味をすべて、舐め取るように、執拗に強く、長く、ゼロスはフィリアを貪り続けた。
瞬の間、ゼロスはフィリアを解放し呟く。
「何故、あんなことしたんです…?」
その時、ゼロスの表情が崩れた。
しかし、束の間、噛みつくように、フィリアの顎から首筋にかけて強く吸う。
「…んっ…」
はだけた服の間に手を入れ、荒々しく乳房を揉みながら、耳元に口づけ、舌を入れる。
「ぅ…あっ…」
フィリアは、ゼロスの嘗てない激しい責めに、反射的に身を退くが、退けば退くほど、乱暴に引き寄せられる。ゼロスは、乱れきった襟元を引き下げ、上半身を完全に裸にさせる。そして、右の乳首にむしゃぶりつくように、顔を埋める。
「あっ、ゃあ…っきゃっ…」
フィリアは、ゼロスを胸にかき抱いたまま、小さく悲鳴を上げる。
クチュ、クチュ…クチュ
ゼロスが口の中で乳首を執拗に弄び、甘噛みする感覚がじんじんと伝わってくる。
「んっ…んっ…」
フィリアはゼロスの背中に掴まりながら、ぴくぴく反応して身体を揺らす。
「ぁああ…ああっ…」
股間がじんわりと熱くなり、濡れていく。さらに、甘噛みは、次第に激しく歯を立て出す。
「はぁあっ!」
食いちぎる程に噛まれ、フィリアはゼロスにしがみつき、痛みに涙する。
でも、今はそのくらいして欲しかった。あの男達の残した感覚を消して欲しかった。ゼロスも同じ思いなのか、男の残した首筋の傷にさらに深く歯を立てる。
身体の至る所になめ回す卑猥な音、自分自身の、激しい息づかい、たまらなく絞り出される喘ぎ声がフィリアの耳を犯し、余計に股間を濡らしていく。
ビリッビリ、バリ――ッ
ゼロスは、半裸になって腰にたぐりよったワンピースを引き裂き、ぐいぐいとひっぱり足から抜かせようとしている。パンティーがワンピースといっしょに引き下がり、フィリアの小さな恥部を、半分、露出させる。
「あっ…」
フィリアは思わず、太股をきつく閉じ恥部を手で隠す。
「…恥ずかしいですか?」
ゼロスはその手を剥がして、指を股間に忍ばせる。
「ん…あっ……やぁっ!」
フィリアは、真っ赤になる。
「すごく濡れてますね。でも、僕だけのせいですか?」
「…馬鹿…なこと言わない…でくだ…」
フィリアは凍りついたような表情で、ゼロスから逃れようとする。
が、するりと、ゼロスは身体をずらし、フィリアの足首をもって、仰向けに転がす。
「別に、いいですよ。念のため、全部舐めとって、もう一度濡れて頂きますから。」
ゼロスは、フィリアの足を折らせ、恥部を大胆に露出させる。
「嫌っ…見ないで下さい。」
フィリアには、まだ明るい部屋で、逆さまにされて、恥部をゼロスに真っ正面から見られ涙ぐむ。ゼロスは、ゆっくりと、羞恥を誘うように、フィリアの股間に顔を埋める。
「あぁっ…だめぇ…」
フィリアは制止の声をあげながらも、股間にかかるゼロスの息に感じてしまい、顔はすっかり紅潮していた。さらに、舌はフィリアの溝をやさしく通過し、愛液を舐め取る。
「いやぁ…ゼロ…ス。」
腰を浮かせながら、足を引きつらせる。
「…気持ちいいでしょう?」
ゼロスは、クリを撫でながら、陰毛の生え際を舌でちろちろと責めた。
「ああぁっ」
大きな声を上げ、腰をさらにのけぞらす。
ゼロスに恥部を露出し、舐められ、身体をそらす自分の姿は、フィリアにはとうてい許容できない羞恥だった。しかし、にもかかわらず、さらにほとばしる愛液はゆっくりと白い股をつたい、フィリアの満足を示してしまう。
「…もう…あっ…恥ずか…し…」
フィリアは腰を戻し、何とか平静を保とうとするが、
ゼロスが…乳房を掴みながら、クリをくわえてしまう。
チュッ…チュッ…クリが吸われていく。
「はぁっ…ん…んぁ…あんっ…」
フィリアは、思わず力が抜け、激しく喘ぐ。もはや、前後の感覚さえわからぬほど感じていた。
ゼロスが、膣に舌を伸ばしたとき。
「ひゃぅっ」
フィリアは、とうとうイッてしまう。
フィリアの膣が微妙に震えながら、大量の愛液を分泌している。
ゼロスは、顔を覆うフィリアに上っていき、その手をとる。
「ゃっ…」
フィリアは、すっかりイッてしまった表情を隠そうとしているようだが、その息づかいと、潤んだ目…恥部に指を立てると、まだ身体をのけぞらし、可愛い表情を見せてくれる。
「…行きますから。」
「…んっ…」
フィリアは小さく頷いた。
ぜロスはいつの間にか裸になり、フィリアを抱きしめた。
久しぶりに挿入されたゼロスは、想像以上にフィリアに痛みを与えた。
フィリアは正常位で挿入されているのに、顔を歪め、ひどく啼いた。
「…痛っ…あぁ…ど…して?」
フィリアはゼロスの腰に掴まりながら、すっかり泣いていた。
「…半年以上、やっていませんから…また血が出てますね。」
ゼロスは、それでも遠慮なく、フィリアの中に潜り込もうとする。
「ん…痛っ…ああぁ…きゃあっ…」
ようやく、奥に滑り込むと、フィリアは息をつく。
しかし、間をあけることなく、ゼロスが腰を激しく動かしはじめる。
「ま、待って…痛っ…」
フィリアは、奇妙な痛みを伴う感覚に怯え、ゼロスから離れようとするが、ゼロスはがっちりとフィリアを押さえつけ、激しく腰を上下させる。
「…これ以上待てるわけないでしょう?」
ゼロスは乱暴にフィリアの膣をかき回す。
「はぁ…ん…」
フィリアは、痛さにのけぞり、涙を流す。
「痛っ…あっ…」
しかし、ゼロスは遠慮なくフィリアの奥へとピストン運動を繰り返す。フィリアは、激しい責めに、ゼロスの腰に足を絡めて、少しでも痛みから逃れようとするが、その動きがかえってゼロスを締め付け、激しくさせる。
「あぁ…」
簡素な床に組み敷かれ、ゼロスが動くたびに、肌が木の破片が刺さり、擦れ傷つく。
それでも、フィリアは幸せを感じていた。ゼロスの背に掴まり、その激しさを全身で受け止められることに酔っていた。
「…私…あっ…もうっ…」
フィリアはふいに、自分がイッてしまいそうなことに気が付いた。
「あぁ---ん…」
ゼロスも、すこし息を上げて、フィリアに口付ける。
「ん…」
フィリアの、身体から力が一気に抜ける。
最後まで腰を動かしていた、ゼロスも力尽き、無遠慮に中出しした。
---------
フィリアは、ゼロスの逞しい腕の中に抱きしめられたまま、とめどなく涙を流していた。
私は、ヴァルを見捨ててしまった…
ヴァルより、一族の責任より、ゼロスを選んだ。
今頃、ヴァルは…
声を押し殺して泣くフィリアをのぞき込み、ゼロスは、涙を指ですくい取った。
「悪かったです。僕の我が侭のせいで、苦しい思いをさせましたね。」
ゼロスは、フィリアのこめかみに口づけ…その身体を強く抱きしめた。
「…ヴァルガーヴさんは無事です。僕がペクツゥム剤を既に施してきましたから。」
フィリアの動きが止まる。
騙された…?
フィリアは目を伏せ、静かに涙を零す。
……ゼロスがずるいのはいつものことですものね。
結局、ゼロスは、自分の立場の範囲でしか動かない魔族。
自分だけが、ヴァルを、神族としての立場を、捨てた…
「怒っていますか?卑怯な手を使って…あなただけに選択を迫って…」
しかし、その声は微かにうわずっていた。
そして、ゼロスはフィリアの背中に顔を埋め、本当に小さな、震えるほど小さな声で呟いた。
偽りとしてさえも、絶対に吐かなかった言葉を-
「許して下さい……あなたを愛しています。」
終わり