Hello I sin1

Feb 23, 2010 19:09


原罪よこんにちわ

毎日が不安で恐いのです。
雨降りの日は特に。

ヴァルガーヴを育てようと思う。
でもどうやって?
今度こそ、彼には幸せになって貰いたい。

でもどうしたらいいの?
私は独りぼっちの黄金竜。
ヴァルガーヴも独りぼっちの古代竜。

彼には淋しい思いはさせたくない。
街行く人々のように…友人がいて、仲間がいて、家族がいて、恋人がいて…
いつも笑っていて欲しい。
真剣になんて生きなくていい。
無邪気に、何も知らないままでいい。
ただ刹那を楽しんで欲しい。

私は彼を「人間」にした。それが正しいことだなんて思っていなかった。最初からそうしようと思ったわけでもなかった。ただ言わなかった。何も言わなかった。もの心つく前に呪術を用い、人の姿をまとわせ、何一つ言わなかった。人間ばかりの社会で彼は当たり前の様に自分を人間だと思い、竜族の能力を使おうとする意識も持ち得なかった。魔術を学ぶ機会はなかった。それは自己充足的な平和な街で縁のない世界だった。

前世と同じく、彼は逞しく、雄々しく、美しい青年に育った。飾り気はないが情に厚く、いつも沢山の友人や仲間に囲まれていた。幼なじみの恋人もいた。金髪碧眼の美少女でどことなくフィリアに似ていた。でも、彼女は少々いや、かなり気が強かったため、「いくら美人でも、ヴァルガーヴ以外には手に負えない」
というのが、小さな町で囁かれる罪のないゴシップだった。

本当にお伽噺のように幸せな生活だった。

「貴女も本当に馬鹿ですね。」
息もつけぬほどの傷を負ったフィリアを抱き起こしたのはゼロスだった。
ヴァルの覚醒、いや暴走に気が付き、やってきたのだろう。
「歴史は繰り返すとは言ったものです。」
フィリアは言葉も、流す涙さえなかった。
「彼は古代竜なんですよ。たった一頭になっても彼は竜として生きて行くしかないのです。運命から逃れられるとでも思ったのですか?貴女は彼に残酷な夢を見せたにすぎません。まあ、また魔族側につくきっかけを作ってくれたのですから感謝していますが。今頃、彼は世界の崩壊を願っていますよ。ナイフでどうにかなるはずもない彼を庇った恋人の無駄死に絶望して、彼女を護る力を奪った貴女へ憎みで心が黒く歪んでいくのが見えました。」
フィリアはせき込んで血を吐く。ゼロスはフィリアの口元の血を袖で軽く拭い、腹部の傷を止血する。
「貴女にはまだ利用価値があるので。」
フィリアを抱き上げながらゼロスは呟く。

「…運命から逃げたかったのは貴女の方でしょ?貴女の願いでしょ?生真面目な貴女が自分の立場になって考えたことはよく分かりますよ。その結果は実に滑稽ですがね。貴女は無邪気すぎるんですよ。でも無邪気は間違いなく罪です。個人的には貴女の愚かさは結構好きですが。今回は高くつきましたね。覚悟しておいた方がいいでしょう。」

彼は、もう許してはくれませんよ、”お嬢さん”

これは貴女が犯した原罪です。

フィリアが気が付くと豪華なベットに横たわっていた。身体はすっかり軽くなっていて、傷一つなかった。記憶を繋ぐものは身体に掛けられていた黒いマント。
「お目覚めのようですね。」
ゼロスの声。

「…ここはザクルトの街です。僕は貴女の怪我を治すことはできませんから腕の良い巫女に頼みました。」
視線を移すと亜麻色の長い髪をした巫女が傍らにいた。
しかしその眼は巫女と言うにはあまりにきつかった。フィリアを睨み付けている。
「有り難うございます。」
フィリアはとりあえず。
「ゼロスに頼みだからよ。貴女に礼を言われる覚えはないわ。」
「というわけなんで、フィリアさんは気を使わないで下さい。」

フィリアの表情がふいに強張る。記憶が蘇ってきた。どんどん顔が青ざめていく。ゼロスは一瞥したが特に何も言わない。確かに彼が天敵の巫女に慰めの言葉もないだろう。
「薬、とりあえず飲んで下さい。といっても聖水ですけど、体力回復にでも効くのではないですか?」
ゼロスはテーブルの上の小瓶をとる。フィリアは受け取ろうとせず、ただ震えている。
「…しっかりして下さい。今更罪の意識を感じたところで事態は変わりはしませんよ。」
ゼロスはフィリアの手に小瓶を握らせる。
「逃げるつもりですか?それともあのまま死んでいた方がましだと?では自ら命を絶たれますか?無責任にもほどがあるんじゃないんですか?」
フィリアは震えるばかりで、手にした瓶を取り落とす。ゼロスは再び拾い上げると、蓋を開けた。
そして、フィリアを抱き寄せ、口移しで飲ませる。

「少しは目が覚めましたか?」
ゼロスはフィリアを腕に抱いたまま尋ねる。フィリアは無意識にゼロスの胸元を掴んだまま、あまりのことに目を潤ませてゼロスを見返す。ゼロスは息をつく。
「これくらいでは駄目な様ですね…。」
ふいに、ゼロスはフィリアの顎を掴むと強引に口づけた。

無防備なフィリアの唇をこじ開け、すぐに舌を絡ませた。
「んっ…」
 さすがにフィリアは目を大きく見開く。ゼロスは激しく舌を絡めフィリアの唇を軽く噛む。フィリアはその強引な行為を辞めさせようとするが両腕を押さえられ全くされるがままだった。ゼロスの生暖かい舌がフィリアの口の中を好き勝手に貪る。しかもその激しさはどんどん増し、勢いでフィリアをベットに押し倒した。フィリアは自分の口が犯される音を聞き続けた。唇の形が歪むほど激しくゼロスは口付ける。
「ん…んんっ、ふっ…ん」
 フィリアの喉の奥から弱いうめき声を発するだけだった。ゼロスは口づけをとめることなく、フィリアの襟元を大きく広げ、左手を胸元に滑り込ませた。フィリアはびくっとして暴れるが、反対に胸元をはだけさせられる。ゼロスはあらわになった白い首筋に唇を這わせた。
「何をするのです!!ゼロスっ!」
フィリアは激しく抵抗するが、ゼロスの力は弱まることはない。唇は首筋を吸い続けながら、右の突起を鷲掴みにした。自分の乳房が男の手に捕まれる様がフィリアの視界に入った。
「いやぁっ」
フィリアは悲鳴を上げた。ゼロスはかまわず首筋をうなじに沿って吸いながら、両の乳房を掴み、押し上げた。
「いやあああっ」
フィリアは痛みと羞恥で泣き叫ぶ。しかしゼロスは両胸を容赦なく掴んだり押し上げたりする。
「いやっ…いやぁ、ゼロス…やめ…て…」
フィリアは顔をそむけ、涙声で繰り返す。ゼロスはフィリアの耳をあまく噛む。
「あんっ」
フィリアはびくっと身をのけぞらし可愛い声を上げる。ゼロスはフィリアの胸を揉みしだきながら、首筋を、耳を執拗に吸う。そして徐々に唇は下へと滑り、到達した胸の先端を強く吸う。
「やぁっ!…いやぁっ、やめ…てぇ…」
フィリアは考えられないほどの恥ずかしい行為からなんとか逃れようと起きあがる。が、ゼロスは肩を押さえ込み、激しく先端を吸い続ける。それでも抵抗するフィリアにお仕置きなのか、小さ桜色のしこりを噛んだ。
「あうっ」
 フィリアは身を縮め苦痛に悶える。ゼロスは乳房を掴みながら痛みの残る先端に舌を這わせ、今度は優しく口の中に含み転がす。
「あぁっ…はぁん…」
 これにはフィリアも甘い声でかえしてしまう。抵抗も一気に弱まる。フィリアの身体に体験したことのない心地よさが広がっていた。ただそれは未知の感覚であり、彼女を怯えさせていることにかわりはなかった。フィリアは目に涙をため、ゼロスの愛撫に身を任せた。ゼロスは抵抗しないフィリアに優しく口づけ、さっきより柔らかくフィリアの胸を揉んだ。そして、片方の手がフィリアの大腿部を滑りその付け根に到達する。下着の上からその暖かみに触れる。フィリアの表情が少し反応する。容赦なく指がの下着をくぐり抜け侵入してくる。フィリアは顔を背けるように快感に悶える。ゼロスの指は次第に大胆になり、割れ目をなぞりはじめる。
「ふっ…ん。」
フィリアも小さく声を漏らす。指は割れ目を何度もなぞった。
「んっ……あん。」
フィリアは足を動かし快感から逃れようとする。が、ゼロスの指を離すはずもない。反対に足を上げた彼女の隙間にするりと指が差し込まれる。フィリアは聖域への侵入に声を出すこともできず悶えた。その切なげな表情にゼロスは思わず愛おしげな視線を送る。ゼロスは、いつのまにか下着を引き落ろすと舌先で責めはじめていた。丁寧に全体に舌を這わせる。
「あっ…」
フィリアは足を閉じようとするが、ゼロスが許さず、逆に大きくおし広げ、さらに大胆に舐め上げる。
「…やぁっ」
フィリアは足を震わせ反応する。ゼロスは白い股の間に大胆に顔を入れ、舌でフィリアの前側にある小さな突起を刺激した。そして震える彼女の足の間にある花びらを広げ、中の赤い蕾を探し当てる。それを指でつまみ上げた。
「あっ…あっ…だめぇ…」
フィリアはぴくぴくと身震を繰り返しながら喘ぐ、あまりの快感にどうにかなってしまいそうだった。ゼロスは彼女の脚を肩にのせ完全に自由を奪い、指で蕾を撫でる。
「…だめ…触らな…おねが…あっ」
フィリアはか細い声が響く。彼女の顔は恥ずかしさですっかり紅潮していた。ゼロスはそれを舐め、吸い、甘く噛む。
「…あっ…あはぁ…あっ…はぁん…」
もはや言葉にならないフィリアの甘い喘ぎが続く。フィリアは息絶え絶えだったが、ゼロスは依然として秘所に顔を押しあて、舌を奥へと差し入れる。
「だめぇ…だ…め…お願い。」
フィリアはすでに泣いていた。
「やめ…おねが…ゼロ…ス。」
フィリアはあとからあとから自分を浸食する快感に怯え、ゼロスに懇願した。
「大丈夫ですから。」
ゼロスは、フィリアの蜜を舐め上げながら答える。しかし、フィリアのすすり泣きに顔を上げた。彼女の怯えた表情を覗くと優しく口づける。ただし、指は、彼女の恥部の中に差し入れ、軽く動かしていた。
「あっ…あっ!…ああぁっ」
フィリアの脚は小刻みに痙攣し反応していたが、なおも逃れようと脚を動かす。しかしそのたびに指は奥へと進んでいく。またその上で、ゼロスは甘く優しく口づけを繰り返しながら、胸の前で固くされた彼女に手を握る。
「大丈夫ですよ。フィリアさん…」
 フィリアは、下部の指の動きに乱されるあまり、自分に恐怖を与えている丁本人の手を握りかえす。一瞬、ゼロスは切なげな表情をした。
「安心して下さい…恐いことなどありませんから。」
と、フィリアのふっくらとした唇を愛おしげに舐めあげ舌を侵入させる。右手では彼女の髪を撫でつけ、頬をつたう涙を拭った。しかし、ゼロスはフィリアの腰をそっと浮かせる。すると、すぐにフィリアを激痛が襲う。
「あうっ、あああああ--------っ」
フィリアの絹をさくような悲鳴が部屋中に響き渡った。ゼロスが不意打ちのようにフィリアを貫いていた。フィリアは大粒の涙を流し、顔をこわばらせ震えた。ゼロスはフィリアを抱きしめながら、容赦なく腰を上下させる。
「やっ、動か…ない…で…ゼロ…」
痛みのあまりフィリアは青ざめ小刻みに震えた。
「少しの間だけ我慢して下さい。すぐに楽になりますから…」
ゼロスはフィリア頬を落ち着かせるように撫でた。
「んっ、うっ…ん…あうっ」
フィリアは哀しそうな目でうめく。さらにゼロスはフィリアを抱き直し深く侵入する。
「はあっ、ああああっ、ゼロ…ス……やめて…お願……い…。」
しかしゼロスは十分奥まで挿入してしまう。そして苦しげに目を伏せたフィリアに口付ける。また激しく腰を動かす。
「いやぁん…やぁあ…ん…あんっ」
フィリアは繰り返される律動に涙声で喘ぐ。ゼロスが中で動く感触が溜まらなく恐かった。自分の身体の中をゼロスがどんどん侵入する。しかも身体だけではない、心に響く。ゼロスは乳房を優しく揉みながら首筋を吸いながらフィリアの中で暴れ続ける。
「はぁ…あんっ…」
フィリアはゼロスに翻弄され、弱々しく、切なげに喘ぐ。そして、いつのまにかゼロスにしがみついていた。フィリアは無意識にゼロスにすがっていた。こんなにされているのに、なぜか…
しかし、ゼロスには、自分にしがみつくフィリアの手の感触、首筋にかかる彼女の吐息が信じられないほどの快感をだった。まるで彼女が自分に全てを委ね、受け入れているような錯覚に陥る。ゼロスはフィリアの足を自分の肩にかけさせさらに深くで律動を繰り返す。
「あうっ」
 フィリアはゼロスにつかまることができず、シーツを掴んでその行為に耐える。フィリアの、潤んだ瞳と不安そうな表情に溜まらなくなり、ゼロスは再び彼女を引き寄せる。フィリアはすぐにゼロスにしがみつく。ゼロスは思わず微笑した。その行為は彼にとってこの上もなく愛らしく、頭がくらくらするほど心地よかった。フィリアの胸元に唇を落としその突起を吸い、先端にあまく歯をたてる。フィリアはゼロスの首のあたりに腕を絡ませていたがその行為に痙攣し、痛みと快感から逃れようと身を剥がす。ゼロスは許さず再びベットに押し倒し、乳房を激しく吸う。
「あうっ」
フィリアはその反動に身を震わせ、身体を苦しげによじる。
「はぁ……ん…あっ」

繰り返される行為に、襲いかかる快感にフィリアは涙目で耐え続けていた。が、ゼロスの腰の動きに徐々に慣れ、少しずつ落ち着きを取り戻しつつもあった。と同時に、さらに大きな快感を感じ始めていた。また彼女の膣は無意識のうちにゼロスのものをくわえ込み、柔らかく締め上げており、ゼロスを喜ばせていた。
「やぁっ…だめ…ふ…ん」
フィリアから甘く、苦しげな声が紬だされる。
「やめっ…て……やっ…、恐…い…ゼロス…。」
止めて欲しかった。どこかに行ってしまいそうな意識…フィリアは消え入りそうな声でゼロスの名を何度も呼んだ。
「大丈夫ですから…僕は側にいます。」
ゼロスが耳元で囁き、彼女の身体をぎゅっと抱きしめた。フィリアはその行為になぜか安心し、涙がゆっくりと頬をつたう、すると力までも抜けていく。ゼロスの背中に置かれていた手が滑り落ちる。あとはただゼロスの繰り返す律動に身を任せた。豊満な胸が呼吸に合わせて大きく上下し、時をおり可愛らしく喘ぎ声が響く。
「あぁ…ん……。」
ゼロスはフィリアの力の抜けた手を握りしめ、口づける。中で何度も舌が優しく絡みあう。フィリアもゼロスの舌に自分のものを無意識に絡ませていた。ゼロスはフィリアの恥部に強く身体を押しつけながら腰をゆっくりと動かしはじめる。
「…あぁ……ゼロ…ス…」
フィリアの切なげな喘ぎ声が答える。ゼロスは何度も回すように腰を動かし、フィリアに感触を執拗に味あわさせる。
「はぁ……ん…」
ゼロスの動きにあわせ、フィリアの恥部は壊れそうに軋む。
「あぁっ…はぁっ…あっ…」
ゼロスはフィリアの華奢な恥部を容赦なく蹂躙し続ける。柔らかな恥部に自分の身体をこすりつける感覚が溜まらなかった。フィリアをこれ以上ないくらい近くで感じられる。まるで全てが重なり合い、解け合っているような感覚。
この身体、暖かみ、愛らしい声、魂すら自分のもの…
自分だけのもの…?
誰にも渡しはしない…?
離しはしない…?
ゼロスの脳裏に奇妙な感覚が横切るが、彼は思考を閉じフィリアを責め続けた。
「はぁ、あぁ―っ」
が、フィリアの切なげな喘ぎ声が一際大きくなり、ゼロスの腕にぎゅっと掴まる。彼女の脚がぴくぴくと痙攣した。すると、ふいに声が途切れる。その時、ゼロスも彼女の中に注ぎ込んでいた。彼女の白い肢体の上に覆い被さり息をつく。しかし、壊れそうに柔らかなフィリアの身体を気遣うように、すぐに身をづらし、彼女を腕の中に抱きしめなおした。

いつのまにか、フィリアはゼロスの腕の中で気を失っていた。目映いほどに美しい白い身体は、ゼロスの行為によって幾つも紅い徴ができていた。ゼロスは首筋の一際目立つ傷に気づくと、いつくしむように血の滲みを舐める。そしてフィリアを片腕に抱いたまま、ベットの横に掛けてあるバスローブに手を伸ばした。フィリアにバスローブを着せてやり、ベットに丁寧に横たえる。自分もいつもの法衣を着ると、傍らに腰を下ろした。
 ゼロスはフィリアの乱れた髪をすいてやりながら、しばらく無言で彼女を見つめていた。フィリアの表情は、涙の跡を除けば、ついさっきまで魔族に弄ばれていたとは思えないほど静かで無垢だった。毛布で彼女を包み込み、額に口づけた。
「…まあ、これくらいすれば、僕に対する怒りと憎しみで気が逸れるでしょう。生きる気にもなれますよ、少なくとも、今すぐ死のうなどとはかんがえなくなるはずです。今、貴女に死なれては困るんですよ。ヴァルガーヴが冷静になるでしょうから。彼には、”生きている貴女”への憎悪で、このまま闇の世界まで暴走していただきます。間違っても、復活しかけている火竜王と手を組まれるようなことがあってはかないませんので。」
ゼロスは淡々と告げた。
 が、今一度フィリアの柔らかな唇に口付ける。ふんわりと接するだけの軽いキス。
「…貴女をこんな風にするのが心地良いなんて、僕の身体(人間型)は全く精巧にできていますよ。」
ゼロスは小さく呟き、ベットから離れた。

「あんた、気でも狂ったんじゃない?」
部屋から出てきたゼロスに、開口一番、銀髪の女が言った。
彼女は海王将軍リリス。銀髪をきっちり結い上げ、エメラルドの瞳に褐色の肌、身体は鍛え抜かれ、超胸なしの健康美人である。やはり、ヴァルガーヴのことで動き出したようだ。

「一度、神の娘を汚してみたかったんです。それに神官と巫女って悪くない組み合わせでしょ♪」
ゼロスはにこやかに答える。
「あれで本当に陵辱したつもり?」
「…のぞき見ですか?結構なご趣味で。」
ゼロスは表情を変えることなく。
「見たんじゃなくて、見えたのよ!!」
リリスは真っ赤になって怒鳴る。
「あんたが利用している巫女の意識を覗いたら、あんな酔狂なものが目に入ってきたのよ、垣間見していたのが人間だからって安心しない事ね。」
と、踵を返す。
ゼロスは無表情で後ろ姿を見送った。

あのくされ獣神官は、事もあろうに火竜王の巫女を、黄金竜の小娘を、呆れるほど馬鹿丁寧に抱いていた。まあ無理矢理といえば無理矢理、力ずくといえば力ずくではあったが、お優しいことには変わりない。大体女の切なげな声に、仕草にいたく満足気な様子だった。その上、さっきまで傍らで愛おしげに見つめていたのだから奴は完全に異常である。
(しっかり見てしまった私も私だが…)断じてあれは陵辱ではない。そこどころか慰めているようだった。そんな情景を見て気分が良い魔族がいるかああ!!第一、ヴァルガーヴのこと、神封じの結界の異変のことで大混乱し始めているというのに…奴は何を、何をしているのだあああ。

「機嫌悪そうだなあ。」
ふいに若い男の声。リリスは濃紺の法衣を着た青年に駆け寄った。
「聞いてよおおおお。メルン!!」
二人ともなんとなく外観が似ている。緑の瞳に銀色の髪、褐色の肌。彼は海王神官メルン、リリスの相方である。
「獣神官がねええええ。」
「ゼロスがどうかしたのか?」
「女と寝ていたのよおおお。」
「…別にいいんじゃないのお?せっかく人間形態とってるんだし。」
海王将軍リリス、言葉足らずな女であった。
「それがねえ、巫女なのよ巫女、神官と巫女よおおおお。」
「…いやらしくて、いいんじゃないのお?」
「違うわっ、あほたれええ!」
リリスは相方に鉄棒を振り上げる。手許に魚型の鎖のついた愛用の武器である。
海王将軍リリス、気が短く、口より手の早い女であった。
「わかった、わかった。どんな娘だったんだ?相手に問題があったんだろう?」
メルンは彼女が話しやすいようにしてやる。
「火竜王の聖一位の巫女なのおおおっ」
「へえーっ、ゼロスも涼しい面して結構やるものだなあ。任務以外では危ない橋を渡らない、事なかれ主義のやたら上司に忠実な優等生とばかり思ってたけど。」
メルンは感心したように。
「もおっ、凄かったんだから。もうっ、あんなの見たら、下級魔族だったら滅びているわよ、世を儚んでいるわよ。」
「お…お前覗いていたのか?趣味悪っ…」
「さっき違うといっただろおおおがっ!!!」
すごんっ、
無論ゼロスに…

眩しい光にフィリアは目を開けた。カーテンから木漏れ日が差し込んでいた。フィリアはぼうとしたまま、明るい方向を見た。薄暗い部屋の中、ダークグリーンを貴重とした高価な装飾を施されている。フィリアはふいに呟く。
「…夢?」
 フィリアはおそるおそる自分の身体を見つめる。広いタブルベット、暖かな毛布にしっかりとくるまれていた。毛布を上げると、白いバスローブをきちんと着ている。しかしあたりを見回すが昨日まで着ていた服は見あたらない。そして隣に残されたシーツの乱れ、極めつけが首筋や胸元に残る紅い傷。にもかかわらず、フィリアは落ち着いていた。というより、何も考えられなかった。どうして、ヴァルを傷つけ、彼を暴走させ、彼に殺されかけ、ゼロスがやってきて、介抱してくれて…最後がこうなっているのか全くをもって解らなかった。だいたい、そもそも、あの行為は…フィリアは真っ赤になる。知らないわけではないが、知らないに近い。その行為を発音したことすらないのに、考えたことすらろくになかったのに、全てを飛び越えて最終地点に到達してしまったのだ。それに、あれは子供を宿すための愛情深い儀式なはず。何故ゼロスが…ゼロスは子供が欲しかった---っ?わけない。大体魔族は生殖行為など行わないし、そもそも彼の身体は仮の姿…フィリアのこれだってかりそめである。私を貶めようとした?それが一番妥当な気もするが…ゼロスのやることとしてはあまりに芸がないし、無意味である…。
しかし、結論にすぐに下された----そんなことを考えている場合じゃない。
ヴァルを探さなければ…フィリアは急に自分の頬を叩く。
「しっかりしなくてはいけません…私が撒いた種なのですから…」
それでも眼にはじわっと涙が浮かんでいた。
「自分でなんとかしなくてはなりません。」

「自分が嫌われても、憎まれることになってもかまわないわけ?どうしても彼女に滅びを願わせたくないわけね。」
ゼラスは蒼いグラスに映し出された光景を見ながら呟いた。
「…リリスの言う通り、少し狂っているわよ。そもそも貴方といい、愛しい巫女といい「その身体」はまがい物、入れ物にすぎないのよ。貴方には身体なんてない。貴方は黒い錐…闇の道具。あの巫女が神の御使いの巨大な竜にすぎないのと同じようにね…。仮初めのまやかし同士で交じわって何が残ると言うの?…どうして、肌のぬくもりが慰めになるなんて思いついたの?」

偶像の創り方

初夏の日差しが降り注ぎ、湖面は宝石のように輝いていた。
それに負けぬ程の輝きを放つ、柔らかな金髪が微かな風に揺れる。

草むらに敷かれたタオルの上には、小さな赤ん坊が手足をぱたつかせている。
若い母親は、その手にミルクを持たせてやり、頬笑んだ。

何故、世界中の画家は、飽きる事もなく、こんなたわいのない母子の姿を描き続けるのだろう。
何故、こんなちっぽけな姿に、人間は神の影をみるのだろう。

その単純な図式に隠された暗号。
一重の陰もない光の楽園、全ての生命がきらめく瞬間。

このために、命ある万物は、生まれてくるといっても過言ではない。

でも、それは永遠ではないのである。
それどころか、一瞬である。

光は必ず消える。
美しい偶像は必ず滅びる。

滅びのときに、流す涙はとてつもなく冷たく。
悲痛な叫びは永遠にこだまする。

一瞬のために、
あるいは、ある一つの栄光のために、
どれだけの犠牲をはらうことが、正しいといえるだろうか?

あの激しい痛みを生み出すくらいなら、
最初から何もない方がよい。

世界が軋むほどの哀しみが溢れ出すのなら、
最初から光など存在しなければいい。

だから、「こんな光景」には虫酸が走る。
それが完璧なら完璧なほど、この手で握りつぶし、
肉塊と化してしまいたい。

生々しい血の傷なら、
ときの流れが、知らぬ間に風化させてくれる。
ときは、完全なる、「0」を創り出す。

-彼らを滅す命は、とっくに下りている-

いつでも、殺すこともできるから、
期限すら与えられていない。

だから、
手の空いたときに。
気が向いたときに。

漆黒の髪が、一筋の強い風に揺れた。
それに合わせて、彼の座っている木の枝が、小刻みに震えた。

赤ん坊の座っているタオルがはためく。
若い母親はそれを押さえ、赤ん坊を庇う。
美しい金髪が、大きく膨らんだ。

彼女の視界を、いつのまにか、黒いマントが覆っていた。
「ゼロス?」
「ひどい風ですね。」
ゼロスが手を軽く挙げると、風の軌道がずれる。
「…ありがとうございます。」
不本意そうに顔をしかめながらも、フィリアはお礼を言った。
しかし、彼女のオーラーは、全くといっていいほど警戒心を含んでいない。

いつからでしょう?
貴女が僕に頬笑みかけるようになったのは…

解らないのですか?
殺されてもおかしくない状況なんですよ。

愚かな方ですね…

「ゼロス、ヴァルをちょっと、頼みます。そろそろ、お昼の支度をしようと思って…ゼロスも食べますよね。もう少したつと、ジラスさん達も来ますから。」
フィリアはバスケットから皿、コップ、フルーツ、サンドイッチを次々と取り出す。

ゼロスは、赤ん坊の柔らかな身体を抱きながら、フィリアの横顔を見つめた。
この世の祝福を一身に受けたかの様に、満ち足りた表情。
ついこの間、哀しみで壊れそうなくらい泣いていたくせに。

そんなに頬笑んでいても、どうせ、また、泣く日が来ますよ。
幸せなうちに、滅してさしあげましょうか?

ゼロスの手が静かにフィリアに伸びてゆく。

フィリアは触れられる寸前で振り返った。
そして、何の疑いもなくゼロスの懐に近づき、ヴァルの頭を撫でる。

「そうだわ、ゼロス、ヴァルはハイハイする様になったんですよ。」
と、フィリアはヴァルを草むらに置いた。
ヴァルは、機嫌良さそうに笑って、足をパタパタさせた。
が、フィリアがゼロスの膝を叩くと、
一心不乱にハイハイで突進してくる。
小さな赤ん坊はゼロスの膝をよじ登り、胸にぴっとり顔をつけた。

「ねっ、面白いでしょ?」
「面白いって、フィリアさん…ヴァル君は犬じゃないんですよ。」
「だって、可愛いんですもの。」
フィリアは、ゼロスに抱かれたヴァルに頬ずりする。
「ちょっと、僕を殺す気ですか?」
「大げさなこと言わないで下さい。」
フィリアはそう言いながら、ふわりとゼロスの頬に口付けた。
「何でもないでしょう?」
不意をつかれて、ゼロスは固まる。
「じょっ、冗談はやめてください!!」
「はい、はい、悪かったです。」
フィリアはクスクス笑って、まだ皿を並べ出す。
「貴女、変わりましたよ。以前はもう少しかわいげがありました!」
ゼロスはがらにもなく、ムキになってしまう。
「当たり前です。変わらないものなんてないですよ?それに、ゼロスが私を可愛いなんて思ったことないでしょう?」
「…まあ。」
「だったら、かわいげも何もないじゃないですか?」
フィリアはゼロスの口に切りかけの林檎の欠片を押し込む。
ヴァルが、ゼロスの顔に手を伸ばして、林檎をとろうと、きゃっきゃと、騒いでいる。

どこまでも続く、澄み切った青い空の下、
世界中の画家達をとらえてはなさない光景。
張り子の様に薄っぺらい、家族の肖像。
必ずや崩れる、美しくも残酷な図。

「虚構の世界にだけ創りあげられた、信仰の果ての楽園…
誰が、そこで、役を演じて来いと言ったかしら?
光とともに、滅び去るつもり…?ゼロス。」
ワイン・グラスに映し出された情景を見つめたまま、ゼラスは呟いた。

BACK

これは、サクラさんのサイト乾坤の夜想曲様に押しつけてしまった『原罪よこんにちわ』の、16年前くらいの場面のつもりでもあったりします。なお、18禁ヴァージョンでの『原罪よこんにちわ』もあったりします。幸せが崩れた様子が見られます。(えっ…)壁紙は、Background by Marie 様のフリー素材です。

Previous post Next post
Up