Title:Sleep Tight
Author: むいむい
Pairing:Viggo / Sean
Rating:R
Disclaimer:They are not mine.
*Fiction in Japanese
おれは”魔法”が使える。
魔法、といっても、ほんのささやかなものだ。
ある夜、一人でベッドに横になっているときに”それ”は始まった。翌日は朝早くから忙しくて、少しでも寝ておかなくちゃならないのに、でも、眠れない。
なぜかおれは、”彼女”ではなく、”彼”でもなく、ショーンのことを考えた。
つぶった目の奥にに浮かぶショーンは、ぐっすり眠っている。
色々なものに愛されている彼だが、眠りの神にも愛されていたらしく、ベッドにはいれば即安眠できるタイプだった。撮影の合間のちょっとした時間にも、実に気持ちよさそうに眠っていて、その姿には見ているこちらも癒されたものだ。
それから、おれはさらに具体的に彼のことを思う。
安らかな呼吸、あたたかな体温、滑らかな首筋を間近にあるときのようにつぶさに思い浮かべた。
……すると、いつの間にか隣にショーンが現れた。
それがただの夢じゃないとおれが思ったのは、まるで”理想のシチュエーション”じゃなかったからだ。
彼はTシャツにスウェットパンツという、色気の欠片もない寝間着をきこんでいた。
だが、その厚みのある体をぎゅっと抱きしめるだけで、何も気にならなくなる。首筋に顔をうずめ、柔らかくていいにおいのする彼の皮膚にそっと歯を立てる。
「ああ……お前なのか……」
ショーンは眠りを妨げられて不機嫌そうだった。
おれはめげることなく手を動かして、彼の体から邪魔っけな布地を引き剥がそうと苦闘する。ズボンと下着をいっぺんに引きずり下ろし、Tシャツを脱がせようともぞもぞやっていると、彼は動物のような低い唸りをあげながらも、腕を動かして協力してくれた。
ようやく、一分の隙もなく肌を触れあわせると、深い息が漏れる。
「眠れないのか、ヴィゴ?」
低く、まるで寝言のような声。
「うん……おれの抱き枕になってくれよ……」
「しょうがないな」
ショーンは微かに笑う。だが、不思議と驚いてはいない。
「ヴィゴ……目をつぶって……よく眠れ……」
そう言うと、彼はごそごそと寝返りを打ち、おれに背中を向ける。
彼の胴に腕を回して、おれも目をつぶる。
だが、あまりにぴったりとくっついているので、おれの体は勝手に反応を始めてしまった。むっちりと丸い尻のスリットに押しつけたおれの腰が、だんだん熱く重くなってくる。おれの状況を気にも留めず、ショーンはすやすやと寝ている。
なんだか腹が立ってきて、手をあちこちに滑らせて悪戯してみたりする。胸の突起を弄ってみたり、くったりと柔らかなものを玩んでみたり。
「こら……やめろ……」
ショーンは邪険におれの手を振り払う。
「だって……」
未練がましいおれに、眠ってるはずのショーンが妙にはっきりと諭す。
「これは”夢”だから、そういうことをすると目が醒めちまう……一緒にいたいならいい子で寝るんだ」
「……冷たい」
「ヴィゴ……今は”抱き枕”をだいてぐっすり眠りたいんだろう?」
ショーンはそう言ってごそごそとおれの方に向き直り、そっとキスをしてくれた。
湿った唇の感触はリアルで、おれは離れようとする彼の顎をとらえ、またキスをした。彼が微かに口を開け、おれは舌を滑り込ませる。そのまま、息を奪い合うキスになった。互いのものを握りしめ、快楽のもっと先へと進もうとしたところで……
突然、おれは目を醒まし、ショーンの姿は消えていた。
それからしばらく、おれはそのことを忘れていた。
だが、ロケ先のスペインから出版関係の仕事のために合衆国に移動する前夜、おれは、また、ショーンのことを思い出した。
それまでの数週間はスケジュール過密で睡眠時間が短かった上に、よく眠れなくて、疲労困憊していた。横になって目をつぶっていても、勝手に脳がさまざまなことを考えてしまい、頭の中がざわざわして休めなかった。
おれは、また、ショーンが熟睡している姿をうらやましく思い出した。
途端に腕の中にずっしりと暖かいものが現れた。
「お前……また、おれを”呼んだ”な」
目さえ開けずに、ショーンがぶつぶつと言った。
「ショーン……なんで……」
さすがにこのときは、驚いた。夢にしては、あまりに彼の肉体はリアルだった。
「ヴィゴが呼んでるんだから、しょうがない……」
そのまま、ショーンは眠り込んでしまう。完全な熟睡だった。
おれはそっとキスをした。
唇を重ねるだけだったが、熱い気持ちのこもったキスだった。
だが、この夜はおれの”ハリウッドNo.1のキス”の神通力も弱っていたらしく、何の反応も引き出すことはできなかった。
あれこれとやってるうちに、おれの中で何かが切れた。
ショーンの片脚を乱暴に持ち上げ、唾液で濡らした指を後ろに無理やりねじこみながら、前を扱いた。彼は顔をしかめたが、体は反応を始めていた。
彼のいいところに触れるために指を思い切り奥に伸ばし、甘い声をあげさせた。
握りしめたものの先端から生温いものが溢れ出したとき、彼の手がおれの手を遮り、静かな声がきっぱりと「やめろ」と告げた。
「これ以上は、だめなんだ……」
こんなに色々としゃべっているのに、彼は目をあけようとしない。
「実際に会ってやろう……おれも何度も失敗した」
ショーンの言葉は不明瞭だったが、聞き捨てならなかった。
「……”おれも”って? ショーンもこんな夢を見たのか?」
「何回か。眠らなくちゃならないのに、眠れないとき。それから……」
ショーンは眠ったままの声でつぶやいた。
「お前とやりたいのに、やれないとき……」
おれはドキドキしてすっかり目が冴えてしまったが、ショーンは既に眠りこんでいる。
「ショーン……ショーン……どうしておれたち、こんな夢を見るんだろう? いったい、どんな意味があるんだろう?」
おれは興奮を押し殺して、矢継ぎ早に囁いた。確かに、今、おれたちは諸般の事情で恋人同士ではないけれど、何か運命の力を感じずにはいられない。
しばらく、ショーンの寝息だけがきこえていたが、やがて、くぐもった声で彼は答えた。
「”たまには会え”って意味だろう……」
「くそっ……次に会ったら腰が抜けるほどやるからな」
おれの罵りに、ショーンはうっすら笑ったように口許を動かしたが、相変わらずぐっすり眠っているようだった。
「なあ、ショーン、また、あんたを抱いて寝たい、って願ったら来てくれるのか?」
またしても、寝息がつづく。
「お前のためなら……」
随分遅れて返ってきた言葉に、おれはすっかり満足して言った。
「おやすみ、ショーン」
答えはみちたりた深い呼吸だけだった。
それ以来、ときたま--ほんのときたまだが、どうしても眠れない夜に、おれは、ホットではないけれど、安らかな眠りをもたらしてくれる魔法を使う。眠りは深く、心地いいが、目覚めはほんの少しだけ物悲しい。すべてを叶えてくれるわけではないところが、魔法の魔法たる由縁だ。
了
☆豆この誕生日には全然まにあいませんでしたが、久しぶりの更新です。
あんまり久しぶりで書き方を忘れてました(汗)