Title:親しき仲にも…
Author: むいむい
Pairing:Viggo / Sean(NZ撮影中のお話)
Rating:G
Disclaimer:It's not true.
*Fiction in Japanese
--クソッ、まただ。
ヴィゴは心のなかで舌打ちした。
ショーンは、ヴィゴのレンタハウスに一つしかないベッドの真ん中を堂々と占領して眠っている。
--いくら友達の家だからって、くつろぎすぎだろ?
最初はその態度にイラッとして、たたき起こしていた。だが、ショーンは「お前が寝る場所もあるだろう……」(確かに大きめのベッドではあった)などと言って、平気で寝続ける。しまいには「お前がいつまでも起きてるのが悪い」と言い出す始末だった。
ショーンに寝床をとられたヴィゴは、ぶつぶつ言いながらソファや床の上で寝るのだった。
翌朝、相変わらず寝たくれているショーンを、ヴィゴは腹立ち紛れに揺すり起こす。
「んん……?」
「ショーン、こら、起きろ。おれは、怒ってるぞ」
ようやくショーンは片目をあけた。
「ショーン」
ヴィゴは怒った声を出したが、ショーンは、
「本当におれをどかしたかったら……そうしてただろう?」
ふにゃふにゃと呟いて、また、眠ってしまった。
確かにそうだった。
相手が他の連中だったら……オーリやリジやドミニクたちなら、ベッドから蹴落とすか、隅っこに追いやって寝るだけのことだ。もちろん、ショーンにだってそんな風にしても全然問題ないくらい、彼らは親しい。
だが、なぜかヴィゴの中に躊躇があってそれができなかった。ヴィゴの苛立ちの半分は自分に向けられていた。
毛布にくるまって寝息を立てている髭面の友人を、どうしても追い立てることはできなかった。深く眠り込んだショーンの表情は無邪気過ぎて、高い鼻梁の整った顔だちとあいまって、とても繊細に、美しく見えた。ヴィゴは、彼をたたき起こすよりもその寝顔を見つめていたかった。
幾夜となく、ヴィゴは、眠るショーンの姿を息を潜めて見つめた。まるで、魔法で眠る王子を見守る、お伽噺の登場人物のように。
--だが、今日は、限界だ。
くしゃくしゃになったシーツと毛布の上に、ショーンがうつぶせで眠っている。全裸で。
普段着ている襟の伸びたTシャツとハーフパンツ、そのうえ下着までもが足元に固まって打ち棄てられている。
短いブロンド頭からすっきりと伸びるうなじ、役作りのためかうっすら脂肪をまとった肩のまろやかなライン、思いの外分厚い胸板の後ろ側には天使の羽根の痕のような肩胛骨、かすかにくびれた腰につづくライン……そして、ぷるりと丸く、真ん中に寄った、尻。
すべすべとした白い皮膚に覆われた美しいオブジェを、ヴィゴはつくづくと眺めた。
ヴィゴは深々とため息をついた。
何とも言えない絶望感が、彼を打ちのめしていた。
投げ出された足の、指にいたるまでショーンは美しかった。だが、その美しさは、ヴィゴのものではない、と、悟ったからだ。
「ショーン……」
そう呟いて、ヴィゴは頭を抱えた。
すぐ目の前にいる彼が、彼の全存在が、自分のものではないのが辛くて堪らない。
隅から隅までショーンを玩味し、愛したい……。
「ヴィゴ……」
微かな声が聞こえ、ヴィゴは我に返る。
美しい王子が目覚めつつあった。
「腹減った」
この現実世界のショーン--食い意地の張った甘ったれの男--に、自分が恋していることに、初めてヴィゴは気づいた。
了
*NZ撮影中のお話。
*夏だなーと思ったら、全裸でベッドに横たわるショーンの姿が浮かんできて……。
暑いと勝手に脱ぎそうじゃないですか、あのひと。
で、それが全然デキてない友達の家でそんなことする迷惑さときたら堪らないものがあります(笑)
そういうことで書いたお話です。