Viggo誕生日fic

Oct 21, 2011 23:18

Title:真夜中の散歩
Author: むいむい
Pairing:Viggo / Sean
Rating:G
Disclaimer:It's not true.
*Fiction in Japanese



マドリード。深夜。
 仕事の関係者が開いてくれた誕生パーティからの帰り道、何ブロックか手前でタクシーを降りたヴィゴは静かな住宅街を歩いていた。アルコールの熱が冷えていくのが、気持ちよかった。
 大勢で騒ぐのも楽しいけれど、やはり最後には一人がいい。
 歩くうちに様々な思いが頭をめぐる。こうして歩きながら自分ひとりだけの考えにふけるのも、ヴィゴは好きだった。
 月のない晩で、いつもより星がよくみえた。
 ごきげんで歩いていたヴィゴだが、アパートが見えて来た辺りで、ハッと足を止める。
 建物の前に、人影があった。
 警戒しながら、ゆっくりと近づいていく。なぜか片手でポケットの中の携帯電話を握りしめていた。
「やあ」
 人影が声をかけてきた。
「元気そうじゃないか」
 よく響く低い声。
 ヴィゴの肩から力が抜けた。
「ショーン……」
 めずらしく黒いスーツに身を包んだショーンが、ひらひらと手を振っている。
「夢なのか?」
 思わずヴィゴが言うと、
「夢かもな……まあ、ロンドンからここまで、三時間飛行機を我慢すればいいだけだ」
 と、言って、シャンパンをあげてみせた。
「誕生日、おめでとう」
 針金をくるくる取ると、コルクをあけた。
「こんなところで開けちまうのか?」
 部屋まで待たないせっかちさに、ヴィゴは思わず声をあげた。
 ショーンはにやりと笑い、上着のポケットから、シャンパン・フルートを取りだした。
 ヴィゴは思わず、ヒューッと口笛を吹いた。
 ショーンがこんなキザな真似をするなんて、あり得ないと思った。
「さあ」と、グラスを手渡して、ショーンがシャンパンを勢いよく注ぐ。
 薄暗い街灯のオレンジの灯に照らされて、白い泡が光り、煌めく液体が細いグラスの口から溢れた。
「おっと」と、ヴィゴは笑う。
「ショーン、シャンパンは好き?」
 反対側のポケットからもう一つのグラスを取りだして注ぎながら、ショーンは答える。
「……嫌いな人間がいるか?」
「質問に質問で返すな」
 「北の男」としてはビール一本槍であるべきなのだろうが、実はショーンはシャンパンが大好きだ。だが、そのことはおおっぴらには言いたくないらしい。
 いつもショーンはヴィゴの問いにまともに答えない。一番大切な問いかけにも。
 照れが「愛している」というシンプルな言葉を口ごもらせる。
 ショーンは、そんなヴィゴの不満に気づいていたが、それでも、なかなか素直になれない。
「好きだよ……おっと、もうしゃべるな」
 ヴィゴの言葉を素早くキスで封じて、
「ハッピーバースディ、ヴィゴ」
 と、グラスを揚げた。
 二つのグラスが微かに触れあう。
「--ちぇ、かっこつけやがって」
 ヴィゴは、すまし顔でシャンパンを飲むショーンからグラスを奪うと、思い切り抱きしめて唇を奪った。そしてグラスを持ったまま、ショーンの首筋に顔を埋め、広い背中や丸い尻をなで回した。
「こらっ、こっちは恥ずかしいの我慢してキザやってるんだぞ!」
 シャンパンびたしになりながらのキスとペッティングに、ショーンは抗議の声をあげたが、ヴィゴはきいていなかった。
 これから朝までかけて、ありったけの愛の告白を彼にさせるのだ。

上ってきたばかりの下弦の月が、鈍くあたりを照らしている。


 

RPS:ほぼ藻豆

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