Proxy

Apr 09, 2010 20:34

Title:Proxy
Author: mui2
Pairing:House/Wilson
Rating:G
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*Fiction in Japanese
*S4真ん中辺りのお話。超暗いです。



「ウィルソン、あの女はお前にとっておれの身代わりだ」

ついにおれは言わなければならないことを口にした。

「腹黒くて、ひねくれてて……まるでおれじゃないか」

うっかりと冗談にしきれずに図星をさしてしまった。
 その刃はウィルソンだけでなく、おれの心にも深く突き刺さった。

「あの女は、『痛々しいバージョンのおれ』だ」

「きみは今でも痛々しいよ」

ウィルソンの声は静かで、思いやりに満ちていた。

おれは自分の無力さを知った。
 彼はもう、もどってはこない。

彼女の本当の狙いはおれだ。おれがやりたくて出来なかったことを彼女がしてのけることは、彼女に屈服することを意味している。おれを跪かせたいために、彼女はウィルソンを狙い、ウィルソンはみすみす罠にかかった。彼女はウィルソンを骨までしゃぶりつくすだろう。なんてこった。
 だが、おれが全力で彼女からウィルソンを引き離そうとしたのは、彼を守りたいからだけじゃない。
 ただ、彼を他人に渡したくなかったからだ。
 彼の今までの妻達のことだって、おれはまったく許してなかった。
 今回はもっと悪い。おれのような性格の、おれじゃない人間が相手なのだ。

おれはふと、これまで自分がアンバーに対して見当外れの優越感を抱いていたことに気付く。
 アンバーはおれを屈服させる目的でウィルソンに近づいた。とはいえ、それだけじゃない。他人を欺き、利用したあげくに罵倒するような自分を、そうとわかったうえで愛してくれる彼を、心から慕っているんだ。おれ自身がそうであるように。
 そしてやはり、彼女の愛はひとに報いない。ひたすら貪り、搾取するだけの愛だ。相手が疲弊し、倒れるまで。これもまた、おれとそっくりだ。
 おれは、自分がそんな風にしかひとを愛せないことを知っていた。
 だから、ウィルソンがおれを愛しているのを知っていても、何も言わなかった。
 おれ自身から彼を守るために。
 あっぱれな犠牲的精神だと思わないか? それがおれの優越感の根拠だ。

だから、ウィルソンが本来愛していたのはおれだということを思い出させさえすれば、魔女の呪いは解けると思い込んでいた。

だが、ウィルソンは「身代わり」ということが判明してもなお、目を覚まそうとしなかった。

「ウィルソン、おれの忠告を拒絶した代償は高く付くだろう」

今は、まともな人間に近づきつつあるフリをしてみせながらも、おれの心は絶望で真っ暗だった。

g, angst

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