- Title: painkiller
- Language: Japanese
- Rating: R
- Pairing: Lampard/Terry, Lampard POV
- a disclaimer: Of course, it's all fiction.
- Summary: after 07/08 CL final at moscow.
そんな時に言葉なんて、どんな言葉だって役に立たないなんてことは、わりと最近同じ目に遭ったことがある俺のことだからよくわかっている。
2年前のワールドカップ、ポルトガル戦で俺はPKを外し、今と同じようにあのポルトガル人の若造が大喜びしているのを見せつけられた。あのとき俺は、ジョンが守りきったドローを俺が負けにしちまったことばかりを考えていた、今の彼は俺のことなんかだけじゃなくて、もっと大きいもののことを考えているだろうけど、それで俺は構わない。キャプテンってのはそういうものだから。
言葉なんかひとつも耳に入ってすらこないものだけれど、それでも俺はジョンの傍らに行き、肩を抱き、頭を引き寄せて、”It’s OK, It’s OK.” とだけ言い続ける。俺より背が高い奴を抱えるようにするから、不恰好になって頭がごつごつ当たりやがる。
何だって構いやしない。打ちのめされた彼は、モスクワのくそ寒い雨に凍え死なないように、誰かの体温が必要なだけなんだから。
それで、誰かと言うなら、それは俺しかいない。
俺はあらかじめ彼の部屋の鍵を持っていた。
俺たちが勝っていたとしても、負けていたとしても、必要になるだろうと思っていたから。
ドアを開けると予想どおりに、青白い光がチカチカしている。
暗い部屋で音を消したテレビだけつけて、ただベッドに寝そべっているだけのあいつの姿が目に見えるようだった。
「よお、JT」
これもどんな調子で言ったって変わりはない。
無言で部屋にズカズカ入っていって、ベッドに飛び込んで強姦魔になるのもひとつの手だけれど、俺もまた負け犬の一匹だったわけで、そんな元気もなかったし、何か人間らしいコミュニケーションを求めていたのかもしれない。
人間らしいってなんだ?結局、ファックじゃないか。
「何しに来た」
ロンドンの空より低い調子の声。
「『健やかなる時も、病める時も』だからさ」
もちろんロマンティックな冗談が通じると思って言ってるわけじゃない。
俺はジョンの姿が見えるあたりまで部屋の中に進んだ。
ジョンは両腕を額の上に載せて横になっていた。
「フランキー、お前と牧師の前に立った覚えはないぜ」
「俺たちはもっと大事なものの前に立ってるさ」
フットボールの神様?いたとしても今は会いたくない。
でも、フットボールで受けた傷はフットボールでしか癒せない。
俺はベッドのすぐ脇まで来た。
「痛み止めは要るか?」
「酒なんか効かない」
ベッドの脇のサイドテーブルには、ミニバー・サイズのビーフィーターの瓶がすでに転がっていた。
「知ってるよ」
自分でも驚くくらい優しい声で話しかけていた。
「もうちょっと効くやつをやろう」
俺はベッドの端に座る。これを許されるだけで俺はものすごく光栄な位置にいる。
「優しくするな」
「しねえよ」
こんな時に優しくされたい男がどこにいる。
俺はと言えば、ジョンにめちゃくちゃ優しくしてやりたかった。
すでに泣き腫らした目蓋にキスをして、肩を優しく叩きながらただ寄り添って横になって―――でも、俺がそんなことをして何の意味がある?
5番目のPKキッカーを代わってやれない俺がそんなことをして何の意味がある?
「いいか、何もかも忘れさせてやるとは言わない。でもこれだけは聞け、ジョン。俺はこの先同じ目に何度遭ってもお前の隣に居たい。それで毎回同じことをしてやる」
俺は了解も取らずにジョンのボクサーをスウェット・パンツごと引きずりおろした。
俺はテレビのちらちらする光のなかでブロウ・ジョブに耽った。
俺のジョン、俺のキャプテン。
どんなに傷ついても、俺のキャプテンでいてくれ。
最後に、後ろに挿れたままの指を深く突き立てると、ジョンは嗚咽を漏らすようにしながら達した。
俺は彼の涙を拭うようにそれを飲み下した。
真っ暗な部屋でジョンはまた静かに横たわり、俺はベッドの隅に座っている。
暗闇のなかで、ジョンがぼそぼそと喋る誠実な声を、俺はただ受け止める。
「ごめんよ、ごめんフランク・・・お前のゴールを、お前が天国の母ちゃんに捧げたゴールを俺がだめにしちまったんだ」
泣くなと言ってもジョンは泣く。謝るなと言ってもジョンは謝る。
何日か経ったら西ロンドンじゅうに謝っているだろう。
本当は俺には謝らなくてもいい。でも謝ってもいい。
それくらい俺はジョンに惚れている。
"It's just another game of football."
The End