- Title: 白夜 -byaku-ya
- Language: Japanese
- Rating: G (very light Slash/微腐)
- Pairing: KS/TT (the alfee)
- a disclaimer: Of course, it's all fiction. すべて妄想の産物です
- Summary: Inspired by their song "白夜 -byaku-ya
「あ、それ白夜だろ」
楽屋でカメラを弄りながら無意識に鼻歌を歌っていた坂崎に、機嫌よくにんまりした高見沢が声をかける。坂崎の鼻歌は普通の人がやるような歌のメロディラインを簡単になぞるものではなく、前奏や間奏まで再現してコーラスは下のパートというマニアックなやつだ。
「ああ、うん。これ中毒性があるよね」
鼻歌を指摘されれば誰でもたいてい少し気恥ずかしい思いをする、それが自分たちのバンドの曲ならなおさらだ。それで少し複雑な笑顔で返した坂崎だが、高見沢としては自作のメロディを歌われて悪い気はしないのだ。
「この曲もさ、作った頃は北欧の白夜なんて本物見たことなかったなあ。イメージだけだったよ」
懐かしげに語り出す高見沢に坂崎が答える、
「俺はいまだに見たことないよ」
アルフィーのJourneymanは私生活ではほとんど旅をしないのだ。
「でもさ、坂崎は夜暗いの怖いんでしょ?白夜いいかもよ、夜の街もホテルの部屋も真っ暗にならない」
高見沢が冗談混じりに提案すれば、坂崎の意識は少しだけロマンチックな白夜の街、歌詞の世界に飛んだ。いつか高見沢が連れて行ってくれるならな、なんてうっかり調子に乗ったところで、やはり彼との思い出は東京にばかりあることに気づく。
「そうだな、俺大学入って初めて一人暮らしした時も最初怖くて電気つけて寝てたんだ」
夢想から記憶に話題も飛ぶ。
「人形町のあの部屋?そうだっけ?電気つけて寝てたっけお前?」
高見沢は六畳一間の天井にぶら下がった、微妙な和風デザインの笠がついた蛍光灯を思い出す。坂崎も同じ光景を頭に描いている。
「高見沢が転がり込んで来てから消せるようになったんだ。だってお前が『明かりは消して』って言ったから」
外したレンズの内側の埃をチェックする体勢のまま、顔を上げずに坂崎は言った。高見沢はものすごい不意打ちに赤面する。
坂崎はカメラに話しかけるように呟いた。
「可愛かったよな、19の高見沢」
おわり