『Habitué ――常客―― 』 の翻訳を更新しました。Here is the new part of the translation of Habitué.
スラッシーな内容に、ご注意ください。Please be warned of slashy contents.
Author: Anise様 (
anise_anise)
Pairing: Snape x Draco
Rating: 時々18禁 (Occasionally NC-17)
Previous & Summary:
これまでのお話 & あらすじOriginal Work:
原作 ※この翻訳は原作者様のご許可を頂いて掲載しております
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スネイプは、蒸留葡萄酒杯を取りだしてコニャックを注ぐと、一脚をドラコに渡し、自分も隣の椅子に腰を下ろす。「ご用向きを伺おう、マルフォイ君」
「あの、ドラコって呼んでいただけないでしょうか」
「良かろう」スネイプは身振りで話を続けるよう促す。
「父の遺していったものを、一つずつ調べていたんです。すると、何点か、ご相談したいものが出てきまして。父が所有していた闇魔術関係のものは、ほとんど魔法省に押収されたんですけれど、父は、魔法省にも見つけられなかった部屋をいくつか持っておりまして」スネイプは眉を吊りあげる。「いかにも父でしょう」ドラコは微笑んだ。
スネイプは思わず相好を崩して鼻を鳴らしそうになり、そんな自分に愕然とした。
ドラコは笑みを広げる。「ともあれ、どの品が比較的安全かすら、僕には見当も付かないんです」
スネイプは片手を顎に当て、人差し指で下唇を打つ。「なるほど。後々金銭になりそうな品物を魔法省に持ちだされたくないというわけだ。そして、私が暇を弄ぶあまり、お父上が遺していかれた非合法な物品の――君が金儲けの原資にしようとしている物品の――整理をするほかないと、こう、君は思っているわけだね」
「違います」ドラコは、身を乗りだして声を上げ、心外だという顔をした。「僕が魔法省に干渉して欲しくないのは、奴らは非合法だろうと合法だろうと、お構いなしに何でも持ち去るからです。僕は、ただ」ドラコは嘆息する。「魔法省にとやかく言われることには、もう辟易してるんです。そして、疫病患者のように扱われることに。先生のご意見を伺えたらと思っただけなのに」ドラコはうなだれた。「でも、こちらに伺ったのは、間違いだったのかもしれませんね。僕はただ、ほかの誰も信用してないだけなんです」ドラコは、物憂い顔で立ちあがる。「大変失礼いたしました」
「座りたまえ、マルフォイ君」スネイプは、呆れて天を仰ぎそうになる自分を抑えるのに苦労した。ドラコの悲劇の主人公気取りなところは、全くルシウスそっくりである。「私にどうしろと」
少年の陶器のような頬に、再び赤味が差した。
「不明な物品を一覧にしたので、お目通しの上、ご意見を頂戴できたらと」
スネイプは、ドラコが更なる要望を表明するのを待った。しかし慮外にも、ドラコは口を緘したままスネイプを見つめるだけである。「私の意見が聞きたいと」
「ええ。もしご迷惑でなければ。あの、もちろん、それなりのお礼はいたします」
スネイプは緩慢に手を翻した。「君の金が欲しいとは思わんよ、マルフォイ君」言いながら、ドラコに向き直る。「一覧は、今、持っているのかね」
ドラコはローブの隠しから、丸められた羊皮紙を取りだした。細筆(さいひつ)が、短くとも十二インチはあるのだろうと予想しながら、スネイプは紙を広げる。が、記されているのは、わずかに十二点ほどの項目、うち十点はよく知っているものであった。スネイプは、手中の杯を見つめているドラコに視線を移す。「分かった」
ドラコは弾かれたように頭を上げた。
「今晩目を通して、知っていることを書きとめておこう。明日取りに来たまえ」スネイプは口もとを歪めて薄く笑うと、声を潜める。「君の借りについては、その折に、じっくり話し合おう」
少年は不安げな表情すら見せず、弾むような声を上げた。「ありがとうございます。それでは明日の晩、参ります。七時ごろでいいですか」ドラコはすでに立ちあがっており、顔を輝かせて、スネイプを見つめていた。
スネイプはため息をつき、鼻梁を押さえて不承々々答える。「良かろう」
「本当にありがとうございました」またあの忌々しい微笑みだ。「見送ってくださらなくても結構ですから」
そして、スネイプに口を開く間を与えず――考え直す暇も与えず――ドラコは消えていた。スネイプは、黒装束の膝の上に広げられた羊皮紙に目を落とす。依頼を片づけるのに、さして時間は掛かるまい。何点かの用品は実務で扱ったこともあった。加えて、寮監として自分は、未だあの餓鬼に対する責任を有している。
と、いうことにしておこう。
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