『Habitué ――常客―― 』 の翻訳を更新しました。Here is the new part of the translation of Habitué.
スラッシーな内容に、ご注意ください。Please be warned of slashy contents.
Author: Anise様 (
anise_anise)
Pairing: Snape x Draco
Rating: 時々18禁 (Occasionally NC-17)
Previous & Summary:
これまでのお話 & あらすじOriginal Work:
原作 ※この翻訳は原作者様のご許可を頂いて掲載しております
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翌日、ドラコは、七時きっかりに現れた。スネイプは、ドラコを待たせておくため、わざと約束の時間に仕事を入れ、忙しそうに立ち働いていた。顧みられないことを気に留める様子も見せず、作業台の前に佇み、礼儀正しくこちらを注視しているドラコを見て、スネイプは内心少なからず驚く。
「何かお手伝いできることはありませんか」
急に声を掛けられて、スネイプは、はっと顔を上げた。「そうだな。大して役にも立」
言い終わらないうちに、ドラコは傍らに立っていた。単純労働をしたくて堪らないとでもいった様子で目を輝かせ、スネイプを仰いでいる。「何をいたしましょうか」
「では、これを」スネイプは、月長石を乗せた盆をドラコに押しやった。「粉末になるまで挽くのだぞ。ただ砕くのではなく」ドラコは頷き、作業に取りかかる。スネイプはしばらく、うんざりと少年を眺めたのち、やがて自分の仕事に戻った。いったいこいつの真の魂胆はどこにあるのだろうか。
「この材料の組み合わせ、習った覚えがないのですが」ドラコが口を開いた。「何を調合しておられるんですか」
「脱狼薬だ」スネイプはわずかに唇を動かして答える。「知らなくても無理はなかろう。これは、いもり試験に出される問題より遥かに上級の魔法薬だ」
「そうだったんですね」ドラコは瞠目した。「ルーピン先生のためですか」
スネイプは時計回りに鍋をかき混ぜながら手を休めることなく、不明瞭な唸り声で同意を示す。二人はしばし沈黙の中、各々の仕事を続けた。ドラコが手伝いを申し出る前には、一時期、作業を中断できる段階もあったが、それも遥か昔のこと。次に休息を取ることができるのは、小半時間後である。スネイプは、ドラコの手助けが気に障らないことに気づく。この複雑な調合に、優秀な助手の手は有用であった。魔法薬学を優秀な成績で修めたドラコは、その後一年半ほどホグワーツを離れていたにも関わらず、その腕に陰りは見えない。スネイプは、密かに舌を巻いた。
次の材料を混ぜおえると、スネイプは呪文を唱えて火を弱める。「今晩の作業は、ここまでだ。次に材料を投入するまでには、弱火で十二時間煮こむ必要がある」
ドラコ点頭し、片付けを始めた。「毎月々々、これ全てを、どうやってお独りでなさるのですか」
スネイプは眉を上げる。「慣れだ。それに忘れてもらっては困る。君が生まれる遥か昔から、私は魔法薬を調合しつづけているのだからな、マルフォイ君」
「いったいどうしたら、ドラコって呼んでいただけるのでしょう」
「神の御業(みわざ)をもってしても無理だろう」スネイプは口の中で言う。
「あの、聞こえてますけど」
スネイプは、片側の口角の端を上げた。「聞こえていなかったなら、言う意味がなかろう」
「はあ。――では、先生、改めてお願い申しあげます。ドラコと呼んでいただけませんでしょうか」
スネイプは、その声の真摯さに驚き、少年に向きなおる。「良かろう。では、――ドラコ」
ドラコは花が綻(ほころ)ぶように微笑むと、天板を拭く作業に戻った。「あの、僕、魔法薬の調合とか、もっとお手伝いしますよ。助けてくださるお礼に」
「マルフォ――ドラコ、世の倣(なら)いとして、恩恵を施す側が、その対価を決めるものだが」
「ええ、もちろんです。それでは、何をいたしましょうか」
その素直さにスネイプは不意を突かれる。スネイプは、少年が、どのような代償を要求されるのかと、戦々恐々とすることを期待していたのだ。しかし、ドラコは意に介す様子も見せない。スネイプは訝しげな視線を流し、質問を無視する。「部屋に戻って、君の一覧をともに見るとしよう」ドラコの返事も待たず、スネイプは扉に向かった。
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