Habitué Part 01

May 20, 2007 20:40


『Habitué ――常客―― 』 の翻訳、第一弾です。Here is the first part of the translation of Habitué.
スラッシーな内容に、ご注意ください。Please be warned of slashy contents.

Author: Anise様 (anise_anise)
Pairing: Snape x Draco
Rating: 時々18禁 (Occasionally NC-17)
Summary: あらすじ
Original Work: 原作 ※この翻訳は原作者様のご許可を頂いて掲載しております

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セブルス・スネイプは研究室の筆記机に向かい、三年生の小論文の採点をしていた。目の前の羊皮紙は、深紅色の朱墨(しゅぼく)の痕も痛々しく、すでに一面、血の海のようなありさまである。生徒どもが自分に負わせる、膨大な量の愚かさという十字架を呪い、スネイプは、ため息交じりに悪態をついては、羽筆の先を朱墨に浸す。このような因果な商売をしているとは、いったい前世で何をしでかしたのかと考えていると、扉を叩く音が沈思を破った。「入りたまえ」スネイプは顔を上げることなく、無愛想に言う。夜遅いこの時間だ。どのみちスリザリン寮の誰かが、くだらない理由で寮監に泣きつきに来たに違いない。それでなくとも不愉快な一日の終わりに、これ以上の愚昧さに付き合う気は起こらなかった。

扉が開き、遠慮がちに足音が近づいてくる。スネイプは、無礼な乱入者に構うことなく、採点を続けた。餓鬼など待たせておけばよい。意地の悪い喜びをもって、羊皮紙の上部に大きく『D』と殴り書ききすると、スネイプはようやく顔を上げた。そして、驚いた。というのは控えめすぎる表現だろうか。

目の前には何と、ドラコ・マルフォイが立っていた。ホグワーツを卒業してからさほど変わってはいない。痩身だが強さを秘めた身体に、肝斑(しみ)一つない白皙。灰色の瞳が、白金色の髪の下で煌めきを放っていた。気品のある長靴(ちょうか)から、起毛繻子の肩外衣に至るまで、装いは総じて高価である。すっと背を伸ばし、顎をわずかに上げ、未だに少年特有の尊大さを失ってはいない。世の中には変わらぬものもあるものだと、スネイプは感心した。

「マルフォイ君、光栄にもお運びをいただいたのには、何かわけでも」突然の訪問への動揺を悟られぬよう、努めて物憂げな声色で尋ねる。

ドラコは頷いた。「ええ、先生。ご壮健のご様子、何よりです」育ちの良さを感じさせる声は健在である。

「ああ、変わりなく、マルフォイ君」

机を挟んで置かれている椅子を示し、座るよう促すと、マルフォイは、相も変わらぬ優雅な動作で腰を下ろした。脚を組み、拳を軽く大腿(だいたい)に乗せる。「ご存知かとは思いますが」マルフォイは前置きなく、話しはじめた。「先週、父の判決が下されました」

スネイプは点頭し、羽筆を置く。「胸中お察し申しあげる、マルフォイ君」

悲しげに唇を歪めると、マルフォイは目を伏せ、椅子に背を預けながら静かに嘆息した。「そんなことを言ってくださるのは、先生だけです。ありがとうございます」言いながら、ぎこちなく片手を髪に滑らせる。

スネイプは表情を和らげた。「礼には及ばん。ルシウスには欠点もあったが、それでも君のお父上であり、君たちが互いを大切に思っていたことは知っているつもりだ。君の感情は当然のものだろう」

マルフォイは自分の膝に視線を落とす。「そう言ってくださるのは、先生だけです。父がどんな人間だったか、知ってるつもりです。何をしたかも。何をしようとしていたかも。裁判の結果は当然の報いだと思います。でも」語尾を呑みこみながら、マルフォイは、迷子のように視線を彷徨(さまよ)わせた。しばしののち、大きく息を吸いこんで、口を開く。「皆が僕のことをどう言ってるかも知ってます。だから、あの、その、ありがとうございます」ドラコは、目を上げようとしない。

これほどまでに不安定なドラコを、かつて見たことがあっただろうか。入室したとき纏っていた高慢さは、跡形もなく消えている。通常、罰則を受ける者の定位置となっている硬い木椅子に座らされたドラコは、急に、ひどく幼く見えた。スネイプは覚えず、見るに忍びない思いに駆られる。

「続きは私の自室で聞こう、マルフォイ君」

ドラコは、以前は見せたこともないような穏やかな微笑を浮かべ、頷く。スネイプは書類を纏めると、部屋を横切り、出入り口に向かった。扉を開けて、ドラコを先に行かせ、施錠する。二人は並んで地下牢の廊下を奥へと進み、スネイプの居室を目指した。サラザール・スリザリンの肖像画の前で立ち止まると、スネイプは、符丁を呟く。

「先に入りたまえ、マルフォイ君」続いて入室し、ドラコが部屋を見回すのを見守る。少年は目を見開き、言葉を失っていた。

「私が洞窟に住んでいるとでも思っていたのかね」スネイプは眉を上げる。確かに、教室や研究室で醸しだしている、人を寄せつけない雰囲気からすると、自室の寛いだ空間は、意外に違いない。天井からは吊り燭台が温かな光を投げかけ、壁には書架が並んでいる。調度も、多少使い古されているものの、居心地の良さを演出していた。

「もちろん、そんなこと、思ってませんけど」ドラコはすばやく言う。「ただ、その、こんなところに住んでおられるとは思っていなかったので」そして、奴は、まさか、頬を染めているのか。「でも、あの、すてきなお部屋ですね」

スネイプは片側の口角を上げて薄く笑うと、教職用ローブを脱ぎ、応接家具を指し示す。「まあ、寛いでくれたまえ。飲み物はいかがかね」

「ありがとうございます。ぜひ」ドラコは暖炉脇の両袖椅子に腰を下ろした。

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又、千里の道が始まりました。これからも頑張るぞ! p(*^_^*)q

Lala

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