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男は、家族からの連絡を待った。
十五年間の空白(くうはく)と、突き付け(つきつけ)られるであろう現実が、彼の行動をを押し(おし)留(とど)めた。
家族から、彼への連絡はなかった。
連絡が途絶えた(とだえた)状況下でも、男は、母親が置かれている身の上を、憂慮(ゆうりょ)しなかった。
彼は、葬儀(そうぎ)を済(す)ませた彼女が、自宅で一人、疲れを癒(いや)していると思った。
その一方で、男は、決断の時が迫っている状況を感じ取っていた。
父親の死から一ヶ月後、彼の船が、舞鶴(まいずる)港に寄港した。
男は、母親の近況(きんきょう)を確かめるため、家族に連絡した。
彼の妻は、父親の死を告げ、それ以外の出来事に関しては硬く(かたく)
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